いよいよ昨日から京都府立植物館で「苔・こけ・コケ展2015」が開催されているが、
初日ですでに来場者は1000人を超えているとかで、かなり盛況とのこと(すばらしい!)。
自分はこの企画展のためにここ1週間は会場の展示物や物販の準備に追われていたのだけど、
じつは他にも今月はいろいろとコケ活動があり、充実した1か月になっている。
その第1弾は、11月7日(土)に三重県総合博物館(通称:MieMu/みえむ)で行われた「おとなのためのコケ講座」に参加してきたことだ。
「おとなのための」だなんて、なんてステキな響き!と案内が出されて早々、意気揚々と申込んだはよいものの、
よくよく調べたら現地に行くのに2時間半かかることを知り(しかも前日に…)、当日は午前10時の開催に間に合うよう午前7時には自宅を飛び出たのだった。
▲三重県総合博物館の最寄駅は津市。駅前のロータリーからバスに乗り、博物館までは5~10分ほど。
▲三重県総合博物館。
平成26年4月にオープンしたみえむはオープンしてまだ1年半ということで、とてもきれいな施設だった。
そしてコケがテーマの本格的な講座はオープン以来、今回が初めだったのだとか。
▲講師は若手女性研究者のMさん(嬉しいことにMOSS‐Tシャツを着てくださっていた!)。
今回の講座は博物館の敷地内にあるコケを採取して、顕微鏡で見て図鑑と照らし合わせてみるという内容だった。
まず「コケとは何か?」という基礎的なレクチャーを座学で受けたあと、野外に出てMさんが作られた「コケマップ」に沿って7種のコケを採取する。
この日の参加者は11人。コケ初心者の方が大半を占め(とはいえコケ以外の植物や自然に詳しい方が何人もいらっしゃった)、
さらにクマムシなどコケの中のムシについて調べている方や、東京からわざわざ夜行バスに乗って(!)こられたコケ友のTさんがいて驚いた。
▲まずは敷地内の明るくて土が軟らかめの盛土に生えるコケを採取する。さて、何種類のコケがいるでしょう?
▲いろいろなメンツが見えてきた。
▲コスギゴケ。
▲ケヘチマゴケ。
▲ユミゴケ(これはコケマップのリスト外)。
▲次に踏みしめると靴に水がしみてくるような、水分の多い土壌にて。ウマスギゴケを採取。
▲さらに日陰がちな雑木林のなかへ。
▲ここではコカヤゴケを採取。他にヒメタチゴケの大きな群落からも一部を採取した。
▲日当たりの良い場所に生えるギンゴケを見つけに行く途中に生えていたネジグチゴケ。
裸地の中でひときわ目立っていた赤い柄がコケ好きたちの目にとまらないわけがなく、しばし撮影タイム。
▲はまだ若く、これから成熟していくようだった。この秋中に胞子を飛ばすのか、いや次の春に向けて準備中という感じかな?!
昼食を食べた後は、いよいよ顕微鏡でコケ観察。
Mさんいわく、
「今日はこちらで先に何ゴケかを教えてしまっていますが、本来はコケの名前を調べる時は、
まずは図鑑とコケを見比べて『絵合わせ』をすることが大切です」
とのこと。
今回、図鑑は「原色日本蘚苔類図鑑」 (保育社 ※現在は廃版) と「日本の野生植物―コケ」(平凡社)が、
顕微鏡は、実体顕微鏡と静物顕微鏡が参加者一人ずつに用意されていて、顕微鏡のセットの仕方から教わった。
▲上から時計回りにウマスギゴケ、ヒメタチゴケ、コスギゴケ。こう見るとコスギゴケのなんと小さなこと!
採取後に採取袋(クラフト紙)に入れておいたコケたちは、
たいがい紙に水分を奪われてこのように乾燥しているため、
まずは水滴を落として元の状態に戻す。
▲実体顕微鏡で見たコスギゴケの(帽をかぶった状態)。
何においてもそうだが、コケの同定をするときも判断するための材料が多いに越したことはない。
このように胞子体のついたものが見つかればラッキーだ。
それにしても久々に顕微鏡で見たコスギゴケの帽は、えもいわれぬきめ細やかで美しいつくり。
当たり前だが、これって人や虫がつくったわけではなく、コケ自身がつくり出したものなのだ。
毎回のことながら、顕微鏡下のコケの世界には生命の神秘を感じてしまう
(と同時に、しばらく見ていると「なんかヴェトナム風揚げ春巻っぽい」と神秘のカケラもない想像も膨らませてしまったワタクシ。コスギゴケよ、ごめん・・・)。
▲こちらは生物顕微鏡で見たヒメタチゴケ。
実は私はこの日、大阪で友人の結婚パーティーが夕方からあったため、ここでタイムオーバー。
泣く泣く途中退室することに・・・(なんせ、2時間半かかるんで!)。
参加者のみなさん、7種類すべて観察できたかな。
次回はじゅうぶん時間に余裕を持って参加したい。
なお、Mさんが最初の自己紹介でご自分がコケを意識するようになった
きっかけを話してくださったのがとても印象に残ったので最後に書き留めておきたい。
Mさんは小学2年生の時に、教科書に出てきた海外児童文学「むぎばたけ」(アリスン・アトリー著)のなかで、
ハリネズミのねぐらがふかふかのコケのベッドだったという一文を読んで以来、コケに目覚めたのだという。
私自身は文系で、国語が好きだったということもあり、このエピソードにとてもほっこり。
しかしよくよく考えれば、Mさんはまだ10代にもならない時分から、物語に出てくるたった一文でコケに目覚め、
現在に至るまでそのままコケの道をまっしぐらに進んでこられたのだから、そのコケへの情熱たるや計り知れないものがある。
でもきっと、本来、質の高い物語というのは物語の主題とは関係ないような部分にまで、
そこかしこに子どもの想像力を広げてくれる装置が仕掛けられているものなのかもしれない。
そして著者でさえ予期しないようなところで小さな読者の心を心地よく刺激し、
読者が大人になってもなお心のよりどころとなり続ける存在なのだ。
Mさんをそんな気持ちにさせ、いまもコケ研究の原点となっている「むぎばたけ」、近々ぜひ読んでみたいと思う。
初日ですでに来場者は1000人を超えているとかで、かなり盛況とのこと(すばらしい!)。
自分はこの企画展のためにここ1週間は会場の展示物や物販の準備に追われていたのだけど、
じつは他にも今月はいろいろとコケ活動があり、充実した1か月になっている。
その第1弾は、11月7日(土)に三重県総合博物館(通称:MieMu/みえむ)で行われた「おとなのためのコケ講座」に参加してきたことだ。
「おとなのための」だなんて、なんてステキな響き!と案内が出されて早々、意気揚々と申込んだはよいものの、
よくよく調べたら現地に行くのに2時間半かかることを知り(しかも前日に…)、当日は午前10時の開催に間に合うよう午前7時には自宅を飛び出たのだった。
▲三重県総合博物館の最寄駅は津市。駅前のロータリーからバスに乗り、博物館までは5~10分ほど。
▲三重県総合博物館。
平成26年4月にオープンしたみえむはオープンしてまだ1年半ということで、とてもきれいな施設だった。
そしてコケがテーマの本格的な講座はオープン以来、今回が初めだったのだとか。
▲講師は若手女性研究者のMさん(嬉しいことにMOSS‐Tシャツを着てくださっていた!)。
今回の講座は博物館の敷地内にあるコケを採取して、顕微鏡で見て図鑑と照らし合わせてみるという内容だった。
まず「コケとは何か?」という基礎的なレクチャーを座学で受けたあと、野外に出てMさんが作られた「コケマップ」に沿って7種のコケを採取する。
この日の参加者は11人。コケ初心者の方が大半を占め(とはいえコケ以外の植物や自然に詳しい方が何人もいらっしゃった)、
さらにクマムシなどコケの中のムシについて調べている方や、東京からわざわざ夜行バスに乗って(!)こられたコケ友のTさんがいて驚いた。
▲まずは敷地内の明るくて土が軟らかめの盛土に生えるコケを採取する。さて、何種類のコケがいるでしょう?
▲いろいろなメンツが見えてきた。
▲コスギゴケ。
▲ケヘチマゴケ。
▲ユミゴケ(これはコケマップのリスト外)。
▲次に踏みしめると靴に水がしみてくるような、水分の多い土壌にて。ウマスギゴケを採取。
▲さらに日陰がちな雑木林のなかへ。
▲ここではコカヤゴケを採取。他にヒメタチゴケの大きな群落からも一部を採取した。
▲日当たりの良い場所に生えるギンゴケを見つけに行く途中に生えていたネジグチゴケ。
裸地の中でひときわ目立っていた赤い柄がコケ好きたちの目にとまらないわけがなく、しばし撮影タイム。
▲はまだ若く、これから成熟していくようだった。この秋中に胞子を飛ばすのか、いや次の春に向けて準備中という感じかな?!
昼食を食べた後は、いよいよ顕微鏡でコケ観察。
Mさんいわく、
「今日はこちらで先に何ゴケかを教えてしまっていますが、本来はコケの名前を調べる時は、
まずは図鑑とコケを見比べて『絵合わせ』をすることが大切です」
とのこと。
今回、図鑑は「原色日本蘚苔類図鑑」 (保育社 ※現在は廃版) と「日本の野生植物―コケ」(平凡社)が、
顕微鏡は、実体顕微鏡と静物顕微鏡が参加者一人ずつに用意されていて、顕微鏡のセットの仕方から教わった。
▲上から時計回りにウマスギゴケ、ヒメタチゴケ、コスギゴケ。こう見るとコスギゴケのなんと小さなこと!
採取後に採取袋(クラフト紙)に入れておいたコケたちは、
たいがい紙に水分を奪われてこのように乾燥しているため、
まずは水滴を落として元の状態に戻す。
▲実体顕微鏡で見たコスギゴケの(帽をかぶった状態)。
何においてもそうだが、コケの同定をするときも判断するための材料が多いに越したことはない。
このように胞子体のついたものが見つかればラッキーだ。
それにしても久々に顕微鏡で見たコスギゴケの帽は、えもいわれぬきめ細やかで美しいつくり。
当たり前だが、これって人や虫がつくったわけではなく、コケ自身がつくり出したものなのだ。
毎回のことながら、顕微鏡下のコケの世界には生命の神秘を感じてしまう
(と同時に、しばらく見ていると「なんかヴェトナム風揚げ春巻っぽい」と神秘のカケラもない想像も膨らませてしまったワタクシ。コスギゴケよ、ごめん・・・)。
▲こちらは生物顕微鏡で見たヒメタチゴケ。
実は私はこの日、大阪で友人の結婚パーティーが夕方からあったため、ここでタイムオーバー。
泣く泣く途中退室することに・・・(なんせ、2時間半かかるんで!)。
参加者のみなさん、7種類すべて観察できたかな。
次回はじゅうぶん時間に余裕を持って参加したい。
なお、Mさんが最初の自己紹介でご自分がコケを意識するようになった
きっかけを話してくださったのがとても印象に残ったので最後に書き留めておきたい。
Mさんは小学2年生の時に、教科書に出てきた海外児童文学「むぎばたけ」(アリスン・アトリー著)のなかで、
ハリネズミのねぐらがふかふかのコケのベッドだったという一文を読んで以来、コケに目覚めたのだという。
私自身は文系で、国語が好きだったということもあり、このエピソードにとてもほっこり。
しかしよくよく考えれば、Mさんはまだ10代にもならない時分から、物語に出てくるたった一文でコケに目覚め、
現在に至るまでそのままコケの道をまっしぐらに進んでこられたのだから、そのコケへの情熱たるや計り知れないものがある。
でもきっと、本来、質の高い物語というのは物語の主題とは関係ないような部分にまで、
そこかしこに子どもの想像力を広げてくれる装置が仕掛けられているものなのかもしれない。
そして著者でさえ予期しないようなところで小さな読者の心を心地よく刺激し、
読者が大人になってもなお心のよりどころとなり続ける存在なのだ。
Mさんをそんな気持ちにさせ、いまもコケ研究の原点となっている「むぎばたけ」、近々ぜひ読んでみたいと思う。