TwitterやInstagramで日々の短信がすんでしまうのは、ブログを持つ者にとって果たして良いのか悪いのか。1月もなかなかブログの更新ができない。
今年の目標の一つとして掲げた「1か月に2回はブログ更新」は早くも守れずじまい。いやはや~~。
振り返れば、1月はお正月、仕事で撮影、親戚の結婚式が2件、咲くやこの花館での「咲かない植物 こけ展」の設営とその1週間後にコケトークイベント登壇、
さらにコケの勉強のため岡山で開かれた苔類講習会に参加、家族の誕生日、そして原稿の締め切りが4件ほど、
おまけにテレビっ子恒例の1月スタートの〝ドラマのチェック〟が加わり、なかなか小忙しい1か月なのであった。
そんな中から、もちろんこのブログに書き残しておきたいのは、きのこ展&こけ展のこと。
とはいえ、設営の日もトークイベント当日も何かと持ち込む荷物が多くて、カメラを持っていくことを失念。
新しい一眼レフは画質はもちろん多機能でありがたい反面、前の機種より少し重くなったせいか持ち出すのがやや億劫になっている。
そんなわけでスマホで展示風景をちゃちゃちゃっと撮ったものしかなく、ブレていたり、構図が悪かったりで恐縮なのだがレポートしていきたいと思う。
大阪市鶴見区にある植物園「咲くやこの花館」は、平成2年に開催されたEXPO’90「国際花と緑の博覧会」(花博)の会場跡地である花博記念公園鶴見緑地内にある。
総ガラス張りの建物は花博のメインパビリオンとして建てられ、花博の翌年である91年から大阪市営の植物園となったという。
来場者にとくに人気があるのは温室で、温室内では熱帯性の植物が一年中見られるほか、季節の花も含めて常時300種類以上の花を楽しめる。
そんな植物園において、少し毛色違いなキノコとコケ。
両者ともかつては花が咲かないことから、顕花植物(花が咲く植物)の対語として、
〝隠花植物(花も咲かせられない下等な植物)〟とくくられたものたちであり、
ましてやキノコに至っては現在の分類学上では植物でもない(キノコは菌類に属します)。
この場所で果たして、キノコとコケに集客があるのか?!
じつは開催前から私はひそかに心配していたのである。
▲エントランスにはキノコのポスターとオブジェが。フォトスポットになっていた
1/5-1/26日というおよそ3週間の会期の中で、コケトークイベントが行われたのは1月13日(月祝)のこと。
ドキドキしながら中に入ってみると、園内を一目見て、こちらの心配は杞憂だったことがすぐにわかった。
キノコブースは多くの人でにぎわい、トークイベント用に用意された観覧席もかなり埋まっている。
「え、こんなに人が来るんだ?!」と思った瞬間、いままでの余計な心配が一気に緊張感へと変わる。
▲トークイベント直前。こちらのキノコ風景の垂れ幕がバックにあしらわれた舞台で、オカモス関西メンバー6人でコケの話をさせていただきました
しかし、私はこのイベントの司会役だったので、いざ始まってみれば一人でしゃべる講演会などに比べるとさほどの緊張はせず。登壇者が多いってありがたい。
コケについて画像を見ながらあれやこれやと話したが、最後は近年問題になっているコケの乱獲について触れ、5人それぞれのご意見が聴けたのがとてもよかった。
こうしてイベントは無事盛会に終わり、肩の荷もおりたところで、
今度は一来場者として会場を歩き回ることにする。
まずはキノコブースへ。
所狭しと並べられた研究者やアマチュアたちの大量のキノコ標本に始まり、巨大なキノコ模型あり、キノコ写真パネルあり、
さらには貴重なキノコの化石や弥生時代のキノコ型土製品、かぶればキノコになれるキノコ帽、キノコ小物、キノコ食、キノコグッズがつくれるワークショップ、
キノコモチーフが施された昔の着物や和の小物などのアンティークグッズ等々の多彩な展示に、改めてキノコ文化の幅広さに驚愕。そしてそれらを楽しむ老若男女の数にも!
この日ではなかったが、会期の終盤にはきのこモチーフやきのこ柄、きのこをイメージしたファッションなどで参加する「きのこのファッションショー」なるイベントが開催されたそうだし、
こうして見ると、きのこファンの層の厚さ、楽しみ方の厚さは、おそらく他の植物愛好家と比べても群を抜いているのではないだろうか。
いろんな意味で〝激アツ〟なキノコブースなのだった。
じつは去年あたりから冬虫夏草にも興味が出てきたもので、数々の展示物の中でも冬虫夏草の標本や模型にはとくに目が行ってしまう。
なかでも菌類学者で冬虫夏草の大家であられた清水大典さんの標本細密画がものすごく心惹かれた。
会場にはキノコグッズやキノコに関する書籍を普段はネット販売している佐野書店さんが出展されていて、
清水さんの標本画がバラで売られていたので、何枚か購入した。
さてさて、キノコブースも堪能したので、お次はコケブースへ。
キノコ好きたちの激アツな胞子活動ぶりには圧倒されてしまうが、
コケ好きたちの胞子活動もなかなか趣向が凝らされていたと思う。
※胞子活動:キノコやコケなど胞子で増えるものを愛する人々が、周囲にそれらの魅力を発信する活動のこと。
▲コケブースの入り口。きのこリウム作家・樋口和智さんによる、コケとキノコのコラボ「きのこリウム」の作品が並ぶ
こうして見ると、キノコはグッズや標本が多いけど、生体を見せられるのはきのこリウムくらいである。
一方で、コケは標本はショボい(といったらコケに悪いが、たいがい小さくて茶色いので見栄えがしない)が、
テラリウムをはじめ、生体を見せられるのが展示の大きな魅力と言える。
そんななか、オカモス関西のボスMさんと私が自宅のコケグッズコレクションを持ち寄って作った展示がこちら。
▲Mさんがグッズの内容を一覧にしたマップを作ってくれていた。すばらしい!
内容的には、コケにまつわる洋書、海外の博物画や切手、リース、カレンダー、さらに日本で手に入るコケグッズ、Mさん直筆の貴重なコケノート等々。
設営スペースが思いのほか広くて、飾る時にはどうなるかと思われたが、これはこれでなかなかまとまったように思う。
Mさん、さらに設営・撤収を手伝ってくださったSさん、その節は大変お世話になりました。
そしてコケブースのなかで、長蛇の列ができるほど人気だったのがコレ。
▲手前が写真を撮る人、奥が撮られる人
何かと言うとじつはこれ、「きのこリウム」を手前に置いて、遠近法を利用して、
きのこリウムの森の中に入ったように写真が撮れるフォトスポットなのです。
面白写真が撮れるイタリアの観光名所〝ピサの斜塔〟のきのこリウムバージョンというわけ。
▲お恥ずかしながら、これには私もテンションが上がってしまい、一枚記念に撮ってもらいました
そんなこんなで1月26日に無事に終了した「POPなきのこ展」&「咲かない植物 こけ展」。
今回は私は参加が叶わなかったが、会期中には名だたるキノコ研究者、粘菌研究者、愛好家の方々による講習会やトークイベントがあったり、
コケテラリウムやきのこリウムのワークショップがあったり、そして先述した一般のキノコ好きたちによるファッションショーがあったりと、本当に内容盛りだくさんだった。
3週間の中でこんなにイベントが企画される植物園って他にないのでは?!
これらすべてを企画し、運営された、咲くやこの花館のOさん、Hさんをはじめとするスタッフの皆様の力量にはただただ感服。すばらしい企画展をありがとうございました。
なお、POPなきのこ展は今年で2回目、こけ展は初回だったのだが、会期中の来場者が約2万人に上り、
いまのところ2019年度の企画展でいちばんの入場者数だったとのこと。
昨年はキノコ単体の展示で来場者が1万3500人強だったらしいので、
入場者数の1/3くらいはコケも集客力になったかもしれない。
いや、もともとキノコに興味がある人はコケに、コケに興味がある人はキノコにもと、
互いに興味があることがほとんどなので(ただどちらにも詳しくなるには〝時間が足りない〟と皆口をそろえて言うという・・・)、
両者がそろえば集客も相乗効果、もしもこれから回を重ねて開催され、この企画展のことが広く周知されていけば、もっともっと多くの人が訪れそうな気がする。
とにかくキノコとコケがタッグを組んだら最強だなということがよくわかったのでした。
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「POPなきのこ展&咲かない植物 こけ展」レポ
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