▲ホンシノブゴケ(2013.8月 岡山県)
残暑お見舞い申し上げます。
あっという間にもう8月も後半、
東京は朝晩がだいぶ涼しくなってきて、
少しずつ季節が移り変わっているのを感じています。
皆さんはお盆休みはどのように過ごされましたか?
私はお盆休みの数日間はまるまる夫の実家へ行っていました。
しかし休みに入る一日前、私の方の実家の祖父、祖母、父が揃って夢に出てきてくれて。
さらになぜか今も生きている母、弟、そして私までも登場。いつぶりだろう、久々のF家一堂勢揃い。
こんな夢が見れるのもやっぱりお盆の成せる技??
目が覚めたとき、なんとも嬉しい気持ちになった。
いま思い返しても贅沢な夢でした。
さて8月5〜7日に行われた日本蘚苔類学会第42回・岡山大会について、
印象に残ったことを忘れないうちに書き留めておこう。
順序が逆になるけれど、今回一番心ときめいたコケを見たのは大会3日目のフィールドワークでのこと。
岡山県の内陸部、少し広島県よりの石灰岩台地が浸食してできた渓谷で見た「ホンシノブゴケ」だ。
教えてくれたのは岡山在住のKさん。
Kさん「上流の方にすっごくきれいなコケがありますよ」
私「へー、なんていうコケですか?」
Kさん「ホンシノブゴケって言うんですけど、普通のシノブゴケと違って茎に対して放射状に枝が伸びるので
フワフワと立体的な群落を作っているから、行けばすぐわかるはず」
そうは言われたもののこの時点では、正直、「シノブゴケの仲間か、ふーん」くらいに思っていたのだ。
ある程度のシノブゴケの仲間は、関東をはじめいままで各地でさんざん見てきていたから。
しかし! 実際にご本人に対面するやいなや、一瞬でズキューン! ←(ハートが貫かれた音です)
「なんてエレガント!!」
それはもう心ときめいたこと、ときめいたこと。
結局、観察時間の1/3はこのコケを見ていた(というか見とれていた)といっても過言ではない。
それくらい心をわしづかみにされてしまう美しさだった。
▲半日陰の山地の斜面に突如現れたフワフワ、モコモコ。ホンシノブゴケの群落だ。たしかにシノブゴケの仲間にしてはえらく立体的だ
▲さらに寄ってみる。わわ、一本一本が長くて大きいなぁ。そして緑色がなんとも優しく明るいなぁ
▲ふー、なんとお美しい! 大型だけど作りは繊細。地面に垂直方向にひょろ長い枝が出ていて、全体的に放射状に枝がついている
ちなみに私がこのホンシノブゴケ群落に行き着いたときに、すでに先に観察されていたAさんによると、
「石灰岩地によく生えているコケですが、どちらかというと石灰岩地に直に生えるのではなく、その付近に生えたがるコケ」とのこと。
また、すぐ近くには普通のトヤマシノブゴケ(※)もいたので、両者を比較してみた。
※トヤマシノブゴケって言いきってよいかわからないけど。もしくはヒメシノブゴケあたりか。ここではひとまずトヤマシノブゴケで通します。
▲ホンシノブゴケ
▲トヤマシノブゴケ
▲はい、もいっかいホンシノブゴケ
ち・・・ちがう。
なんて言うんでしょう、トヤマシノブゴケが「大和撫子」なら、
ホンシノブゴケは「ロシア美人」って感じだろうか。
エレガントでありながら、なんともダイナミック!
※ちなみにトヤマシノブゴケもホンシノブゴケも分布範囲が日本・朝鮮・中国・極東ロシアであることからこの例えにしてみた!
シノブゴケの仲間はもともとシダ類の「シノブ」に似ていてることからその名があり、
どの種類も「繊細な作りでレース編みのよう」と称される美しいコケの一種ではあるのだけども。
コケ界の美容番長と(私が勝手に)名付けていたトヤマシノブゴケも、
ホンシノブゴケ様の迫力の前には姿が霞むなぁ。
▲ほら、大きさもこんなに違うのです(右:ホンシノブゴケ、左:トヤマシノブゴケ)
▲トヤマシノブゴケのアップ。「今日の私はちょっと乾燥気味なの。本来の美しさはまだまだこんなもんじゃないわ」と弁解が聞こえてきそう
ホンシノブゴケ様のその美貌の秘密は、
やはり放射状に枝が出ている点にあるだろう。
▲トヤマシノブゴケ。枝葉が地面に対して平行につき、平べったい
▲ホンシノブゴケ。茎に対して枝が放射状についているため、地面から立ち上がるように生える。葉はわりと少なそう。
地面に垂直に向かって生える枝はひょろっと細長くムチゴケの鞭枝のようだ
大型なコケであること、石灰岩地の近くにあること、放射状に枝が出ていて立体的な群落を作っていること、
このあたりを覚えておけば、今後もホンシノブゴケ様と出会える確立は高まりそうだ。
●おまけ
▲「あ、もしよかったら私とかもここにいますんで〜」的にトヤマシノブゴケの間から顔を出すアツブサゴケさん