GWに遊びまくってしまい、いまだにやや連休ボケなのですが、
残席が少なくなってきたとのことなので、取り急ぎ!
6月16日(金)19時半~、東京・荻窪の書店「Title」さん(本好きがわざわざ遠方からも訪ねるという人気書店!)で、
『知りたい会いたい 特徴がよくわかる コケ 図鑑』(家の光協会)の刊行記念イベントをさせていただける運びとなりました。
▲『知りたい会いたい 特徴がよくわかる コケ 図鑑』
このブログでの告知が遅くなってしまったのですが、先週からすでに申込も始まっています。定員25名。
もしご興味がありましたら、お仕事帰りにぜひ遊びに来てくださいマセ!
●イベント詳細・申込みはTitleさんのHPにて → ☆
※このブログでは申込み受付をしていません。
本物のコケにも触れつつ、店主の辻山さんに会いの手を入れていただきながら、
辻山さんのコケ体験についても色々とうかがおうかなと。わいわい楽しい会になればと思っています。
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はー。他にも告知せねばなことや、GWの山形コケ紀行、
その他諸々書きたいことはいっぱいあるのだけど…。
できるところから、ぼちぼち更新していきたいと思います。
【お知らせ】6/16(金)19時半~:コケ図鑑刊行記念トークイベント「コケの世界へようこそ」 @Title (東京・荻窪)
山形コケ紀行(その1)&「お知らせ」を2つ
▲滝のそばの岩上に生える胞子体が成熟してきたコツボゴケ(2017.5月 秋田県)
----------<お知らせ>----------
●その1:『近所で、旅先で、さらに自宅でも。 じわじわ高まるコケの人気。その理由とは?』
「観光 Re:デザイン」という日本のこれからの観光の可能性やスタイルを探ることを
テーマにしたサイトにて、上記タイトルの記事を寄稿させていただきました。
すでに4月末にはアップされていたのですが、GWに遊びまくったり、連休ボケしていたりして、
すっかりここでのお知らせが遅くなってしまいました(担当者Jさん、本当にごめんなさい~!)。
よかったらぜひご覧になってみてください。
※記事はこちら→ ☆
ちなみに記事のトップを飾っている画像は、4月に東京・葛飾区の水元公園で行ったコケ観察会の様子。
撮影を快く承知してくださった参加者の皆さん、その節はありがとうございました。
▲水元公園でのコケ観察会の様子。いろんなコケの胞子体がちょうど出ていた時季で、楽しかったです。
・・・余談・・・
最近テレビや雑誌などのメディアで「コケがひそかなブーム」という切り口で、コケが紹介されているのを目にする機会が多くなった。
たしかにコケの観察会やイベントにはとても多くの方が興味を示し、参加もしてくださる。
個人的には、コケが好きでコケを楽しむお仲間さんが増えていることは嬉しい。
でも、それはあくまで人間界で起こる事象の一つに過ぎないことであって、
コケたちにとっては自分が注目されているなんて、正直、どうでもよいこと・・・にちがいない(笑)。
コケを眺める人が増えようが減ろうが、相変わらずコケは、美しく、神秘的で、ユニーク。そして繊細だ。
もしも、そこに人間の軽率な一手が加わると、いともたやすくいなくなってしまう。
「好き」というその気持ちの根底にあるのは、利己からくるものなのか、それとも相手を重んじる愛からくるものなのか。
私たちがコケに接する時、これからはそんなことを少し考える「ひと呼吸」があるべきなのかもなぁ。
最近、〝ブーム〟と呼ばれる陰でひそかに、そして、大きな問題となっている「コケの乱獲」と「コケの使い捨て」。
上記の寄稿文の結びは、そんなことを思いながら書いたことを思い出しました。
●その2:《祝》『知りたい 会いたい 特徴がよくわかるコケ図鑑』(発行:家の光協会 )が増刷決定!
筆者がGWに遊び呆けている間にも、編集者さんらと力を合わせて作ったコケPOP(説明はまた後日!)ががんばってくれたのか、
予想に反して多くの方がこの本を手に取ってくださいまして、発行からちょうど1か月で増刷が決まりました。
ありがたい。
もう本当にその言葉につきます。
ありがとうございます。
なお、本屋さんに行ったのになかったという方はしばしお待ちを。
2刷目は6月初旬頃には店頭に並ぶと思います。
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さて、ここからは山形コケ紀行。
夫の実家が山形県にあり、もうここ何年もゴールデンウィークとお盆には山形県を訪れるのが常になっている。
関西人からすれば、東北というのは近い親戚がいるなど何かしらの縁がないと、
ほとんど訪れる機会がないし、日常生活の中で情報を得るチャンスも極めて少ない。
事実、山形県について興味を持つチャンスがほぼ皆無だった結婚前の私にとって、
「さくらんぼ」、「ラ・フランス」、「だだちゃ豆」という美味しそうかつ高級そうな三大農産物と
「県民が芋煮会に対して底知れない情熱を持っている」(by 秘密のケンミンSHOW)というのが、山形県のすべてだった。
いま思えば、山形県の皆さん、ごめんなさいってかんじであるが、
きっと関西を知らない山形県民からしても、大阪は「粉モン」に「豹柄」だし、兵庫は「おしゃれな港町・神戸」ってな具合で、
これだけインターネットが発達してもなお、遠い土地へのイメージというのは、
しょせん中学くらいまでに見聞きした情報がすべてになってしまうのだと思われる。
しかし、意外や意外、実際に訪れてみると山形県、なかなかどうしてこれが私の心惹かれるコンテンツが満載の県なのである。
たとえば「縄文土偶」をはじめ、「ジオパーク」、「伝統野菜」、「井上ひさし」、「山伏」、「湧水地」などなど。
どうしてもっと早くこの県に目をつけておかなかったのかと悔やまれるが、今さら悔やんでも仕方がない。
その中から今回のゴールデンウィークは「湧水地」に目的を絞り、
鳥海山の麓にあり、湧水で有名な遊佐町(ゆざまち)へ行くことになった。
もちろん、言わずもがな湧水が豊富なところにはコケがあるだろうと踏んでのことである。
奇遇にも、遊佐町は『特徴がよくわかるコケ図鑑』の担当編集者Eさんのご出身地であったことから、
下調べするまもなく、湧水地の情報を事前に得ることができた。
さらにGW前に、たまたまキノコ写真家で東北エリアの森に詳しい新井文彦さんと飲む機会があり、
「鳥海山麓の湧水地ならここへ行け!」というEさんとはまた違った新情報をゲット。
さらにさらに、夫の姉が鳥海山へ毎年スキーに行っており周辺の地理に詳しいことから、
効率よく複数の湧水地の名所を回るコースを考えてくれ、さらには近くの宿も予約してくれるなど、
なんだかもう、今回は旅に出る前から色々と至れり尽くせり状態。
これはもう湧水地が私を呼んでいるとしか思えない。
そして当日、運転免許がない私たち一家(私のみならず夫もない)は、移動も義理姉や義父にがっつりお世話になり、
首からカメラとルーペだけ下げた状態で車中で爆睡していたら、いつのまにか素晴らしい湧水地の入口に到着していたというわけである。
いやはや、おねえさん、こんな私でごめんなさい。
▲目が覚めたら、今回の第1目的地に到着。
▲看板の柱を見ると「にかほ市」とあり、ここは山形県ではなく、ギリギリ秋田県という場所らしい。寝ぼけつつ、片道10分の道のりを歩きだす
▲遊歩道脇の小川。なかなかの水量じゃないか。寝ぼけていた頭もじわじわと覚醒
▲5月初旬の東北は、林床にスミレが群生。「スミレも種の見分けが難しいのだよなぁ」なんてこと思いながら、さらに先へ進む
そして、看板には「10分」とあった道を
スミレやらコケやらを見ながら20分ほどかけて歩いていくと・・・
▲ででーん!と突如現れた大迫力の景色
見ているだけで涼しくなれるこの絶景。岩という岩がコケだらけである。
驚くべきはこの水が上流から流れてきた川の水などではなく、
その場所、その場所から浸み出している湧水だということ。
入口の看板によれば、溶岩が何層にも積み重なってできている鳥海山の地層に降った大量の雪や雨が、
およそ10~20年の時間をかけて、このように山麓のいたる場所に湧水として流れ出ているのだという。
とくに溶岩の縁部分にあたる場所の湧水は水量も多いため、
このような景観も美しい湧水地として有名になっているとのこと。
▲角度を変えて見た様子。青々としたコケが流水に映える
あの岩場にはいったいどんなコケが生えているのかと非常に気になったが、
正直、目測でも向こう岸にわたるには腰以上まで水に浸かるであろうことはひと目でわかり、
さらにこの勢いのよい流れっぷりからして、うかつに近づくのは危険すぎると判断。
早々にコケの見分けは諦めて、ここではひたすらコケ風景を楽しむことにする。
▲近くにはこのような看板もありました。確かに自然環境保護の点からも入るのはご法度。
でも実際に素人が「川を渡る」のは技術的にもかなり厳しいと思う
ふんだんに水分を含んだみずみずしいコケ、そして耳に心地よい湧水の流れる音、いつまでいても飽きない。
ぼんやり風景を眺めていたら、目の前の岩場にコツボゴケの大群落。ようやく種がわかるコケがいた!(笑)
▲すかさず滝をバックにパチリ
そして、帰り道。行きでは気づかなかったが、靴ひもを結び直すためにしゃがんだら、
スギの大木の足元に胞子体をたくさんつけたコケの群落を発見。
なんだか長く伸びた胞子体の柄が気になって、よくよく見てみると・・・
こ、この子はもしかしてヨツバゴケ!?
まだ胞子体が若くて、ヨツバゴケ(四歯苔)の最大の特徴である4本の蒴歯(さくし)が現れていなかったが、
ためしに1本の胞子体の帽を失敬したところ、まだ未成熟ながら蒴歯の形状がヨツバゴケのそれであった。
さらにもう一つ、ヨツバゴケの特徴となる茎頂部の葉がカップ状になった植物体も発見。
本来なら、このカップの中に粒々の無性芽が詰まっているはずなのだが、
残念ながら今回はそれらしきものが見つからず。
ちなみに、ヨツバゴケの近縁種には「アリノオヤリ」というかわいい名前のコケがあるが、
こちらは胞子体の柄が途中で明らかに「く」の字に曲がるのが特徴。
その点から見ても、今回のコケはヨツバゴケの可能性の方が高そうだ。
ヨツバゴケを自分で見つけたのは今回が2度目。1度目は昨年の8月初旬、山形県内の山中でのことで、
やはり「山形のコケが見たい!」と義父たちせがんで車で連れてきてもらった時だった。
帰宅後、復習のためにも、改めてその時の画像をもう一度よく見直して見ることにする。
すると・・・・・
▲この時は山中の腐木上に生育。すでに胞子体は胞子を出しきって、朽ちつつあるようだった(2016.8月 山形県)
▲ピンボケで見づらい画像で申し訳ないのだが、蒴歯が4つに分かれている(2016.8月 山形県)
▲この時は、カップ状になった植物体が1か所にかたまって、たくさん生えていた(2016.8月 山形県)
▲よくよく中をのぞいてみると、つぶつぶの無性芽が! わかるでしょうか?!(2016.8月 山形県)
▲無性芽は顕微鏡で見ると円盤形だそう(2016.8月 山形県)
できたら今度のお盆休みも、あのヨツバゴケの場所をチェックしに行きたいなぁ。 <つづく>
山形コケ紀行(その2)&「お知らせ」を2つ
6月もなんやかんやで小忙しい日々を送っております。
あぁ、今年はもうちょっとゆったりとブログが書けると思ってたのに・・・。
気力はまだしもなんといっても体力が追いつかないよ。
<私信>
いよいよ明日の夜は荻窪の書店Titleさんでトークイベントが開催されます。
本物のコケを持って行きますので、もし自分のルーペや霧吹きをお持ちの方はご持参くださいませ!
(もちろん持っていない方のために、こちらからも準備していきます)
----------<お知らせ>----------
●その1:池坊華道の専門誌『華道』にコケ特集
オカモス関西支部長Mさんからのご紹介で、池坊華道の門弟の方々が主読者といういけばな専門誌『華道』の取材を受けました。
なんとロケ先は京都の「苔寺」こと西芳寺! 取材当日は取材を受けたというよりも自分が取材に行ったような気分で、
美しい苔庭の写真をたくさん撮って帰ってきました(誌面はもちろんプロカメラマンによる撮影です)。
基本的に一般誌ではないので誌面をご覧になれる方は限られていると思いますが、
このブログを読まれた池坊華道の方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧になってみてください。
▲誌面の雰囲気をちょっとだけご紹介。西芳寺のはじめ、いけばなとコケのかかわりなど6ページにわたった贅沢な特集です
ちなみに、池坊華道といえば、その初代家元・池坊専好(いけのぼうせんこう)の半生が描かれた、
現在公開中の映画『花戦さ』が話題。なんでも「いけばな」がテーマの映画というのは世界初なのだとか。
「もしかしてコケも登場しているかしら」と淡い期待を胸に公開初日に観に行きましたが(じつは野村萬斎ファンでもあるもんで)、
やはりテーマはいけばななのでコケは登場せず・・・。でも役者もいけばなも豪華でなかなか面白かったです。
●その2:「『はじめてのコケ観察会』参加レポートin 水元公園(東京都葛飾区)」
日本のこれからの観光の可能性やスタイルを探ることをテーマにしたサイト「観光 Re:デザイン」にて、
コケについての記事を書かせてもらったことは前回に紹介しましたが、
同サイトのスタッフの方が、4月に行われた水元公園のコケ観察会に実際に参加してくださり、そのレポートを書いてくださいました。
このブログでの紹介がまたも遅くなりましたが、少し前から記事がアップされています。ぜひご覧くださいませ。
※記事はこちら→ ☆
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さて、ここからは山形コケ紀行のつづき。
湧水が豊富なところはコケも豊富だろうと踏んで遊佐町周辺の湧水地巡りに的を絞った今回の山形旅行。
第一目的の湧水地から帰る頃にはすっかり夕方になっていたので、その日はそのままホテルへ。
▲ホテルからの眺め。この日の日本海はとても穏やかで夕日がきれいに見えた
翌日はこれまた義理姉の事前リサーチにちゃっかり乗っかって、湧水の名所に連れて行ってもらう。
▲釜磯海水浴場
▲こじんまりした海岸ながら、砂浜から真水が湧き出ているという不思議な場所
▲浜辺の岩には、私の中の気になる磯の生き物ナンバー1の「フジツボ」がびっしり!
▲海水浴場からすぐの所にある「神子の水(かみこのみず)」。湧水を利用した地元民の共同の洗い場。
1番上は飲料で、一番下の段は子供のおしめを洗うのに使われていたとか。今も現役で、この日は海藻を洗ったあとが残っていた
道の駅での昼食を挟み、そこから再び車で移動。
今回の旅で一番印象に残った湧水の絶景ポイントへ。
▲角度によってスカイブルーやエメラルドグリーンに見える湧水100%の池・丸池。
直径約20m、水深5メートルほどで、池の底まではっきりと透けて見える水の透明度
▲ 小さな池ながらなんともいえない神秘的な雰囲気があり、時間に余裕があればもっと見ていたかった。
地元民からは信仰の対象として「丸池様」と呼ばれているという
▲池のそばにひっそりとたたずむお社
▲さらに丸池から歩いて数分のところにある牛渡川(うしわたりがわ)。こちらの水は無色透明。川岸の所々から水が湧き出しているのが見えた
▲なんと。ここには清流にしか生えないというバイカモの大群落が!
▲近くで見ると、なんだか金色のクジャクの羽で作った織物のようなファンタジーな代物に見え・・・
▲遠目で見ると群落一つひとつがゆらゆらと水中で揺れる様子がなんだか生きもののように見え、
「ジブリ作品のキャラクターになりそう」とか思ったり・・・って、やっぱりファンタジー
▲牛渡川近くの永泉寺(ようせんじ)。なんともこの土地らしい名前。昔は出羽三山を崇拝する山岳信仰の修行の場だったという
あまりうまく撮れなかったけど、コケ生す石段があり、手前の樹幹のホソバオキナゴケが大群落だった
そして最後は車で少し移動して、コケ図鑑の担当編集者Eさんもイチオシだった胴腹(どうはら)の滝へ。
▲山の斜面から豊富に湧き出る水がゆるやかな滝状になっている
▲冬でも凍らないことから年中、飲み水用に水を汲みに来る人が訪れるという
▲小さなお社の左右に流れる滝は湿度も安定しているのかとくにコケ生していた
▲胴腹の滝に最近立てられたと思しき看板
景勝地の写真を撮るのが好きな人などにはこういった自然味あふれる景観のムードに水を差す代物かもしれないが、
ただ「じゃまだなぁ」ではなく、そもそもこの看板が立てられるに至った経緯を想像することも大切なのではないかと思う。
何もしないとコケや他の小さな植物が踏みつけられたり、剥がされたりして、
だんだん景観美が損なわれてきた経緯があったのではないか。
この看板は、地元の人がそれだけ長くこの場所を見守り続けており、
大切にしている表れなのだなと私などは逆にちょっとホッとしたのであった。
以上、途中からコケというよりも、ただただ湧水を追っかけていた感のある今回の山形コケ紀行。
家族旅行だったため、コケばかりを一人で眺めているというわけにもいかず、
たしかにもっとじっくり見たかったという悔いも少し残るが、
それでも、ずっと憧れてきたエリアを巡れたという満足感は大きかった。
これを足掛かりに、次回は5月はまだ雪が残っているだろうということで今回は諦めた
遊佐町にほど近い獅子ヶ鼻湿原(秋田県にかほ市)で「鳥海マリモ」をぜひ拝みたいところだ。
【コケ情報】 6月25日(日)「屋久島でコケの世界に触れる」初心者向けコケ講座 @池袋コミュニティ・カレッジ
おかげさまで先週金曜日の荻窪・Titleさんでの出版記念イベントは盛会に終わることができました。
Title店主の辻山さん、お越しくださった皆さま、楽しい時間をありがとうございました。
ちなみにその翌日、私はコケ観察会へ参加するため長野県の北八ヶ岳へ。
イベントとコケ観察会のレポートはまた後日、詳しく書きたいと思います。
さて、今日は取り急ぎのコケ情報。
関東近辺の方で、この週末の予定がとくにまだ決まっていないというあなた、ラッキーです。
屋久島から講師を迎えての初心者向けコケ講座が池袋で開催されますよ。
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-縄文杉発見50周年記念イベント講座『屋久島でコケの世界に触れる』-
水と森を養い、屋久島の自然を支える豊かなコケの世界。
実際に屋久島産の標本を観察して、コケの世界をのぞいて見ましょう。
●日時:2017年6月25日(日)16:30〜18:00
●場所:池袋コミュニティ・カレッジ
●講師:小原比呂志(YNACガイド)
●受講費:2000円
●申込み(先着順):池袋コミュニティカレッジHPにて。イベント詳細もこちら→ ☆
●お問合せ:池袋コミュニティカレッジ 電話 03-5949-5488
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講師の小原比呂志さんといえば、十数年前に母と屋久島旅行に行った際に
たまたま森歩きのツアーを担当してくださったガイドさんで、自分に初めてコケの世界を教えてくださった人。
屋久島のコケの分布調査などコケ研究者の方々と一緒にいくつも論文を発表されたり、
現地でしか買えないというレアなコケ図鑑『屋久島のコケガイド』の制作にも関わられたりと、
コケ界では知らぬ人はいない存在。そして、いまなお私の「屋久島のコケ師匠」なのであります。
当日はスライドを使ったコケと森の関係などのお話をはじめ、
代表的な屋久島のコケをサンプルとしていくつか持ってきてくださるとのこと。
まだ席がいくつかあるとのことなので、ご興味がある方はぜひ早めのお申し込みをおすすめします!
小原さんのコケの話が東京で聴けるチャンスはめったにないと思います。
ちなみにお話が面白いことはもちろん、一聴の価値はあるめちゃめちゃ〝いい声〟なので、そのへんもお楽しみに(笑)。
7/2(日)~17(月・祝) 苔の「道草michikusa」プロデュース 道草したい、小さな苔の森 at アウラの部屋 @大阪・心斎橋
またもブログでの告知が遅くなりましたが、
今週末7月2日(日)からこのようなコケフェアが始まります!
開催場所は大阪・心斎橋のど真ん中にある書店・アセンスさん。
フライヤーの写真にある通り、今回の展示の中心は、
山梨在住の道草さんが手塩にかけて育てた苔テラリウム。
そこに、訪れる皆様に、苔テラリウムを見ているようで、じつは苔テラリウムの中に迷い込んだかのような、
そんなコケがいっぱいの空間を、時間も忘れて道草をするように楽しんでもらおうというのが今回の企画です。
道草さんからお声がけいただき、私も展示の一部(写真や文章)をちょこっとお手伝いさせていただいております。
▲展示予定の苔テラリウムの一つ。もともと「キノコの棚」なるものが店内にあり、キノコ好きが多く訪れるアセンスさん。
そんなお客さんのために、このようなキノコ型の瓶に入れたのだそう
さらに、もう一つのみどころは、アセンス担当者Kさんが「これでもか!」とばかりに集めたコケにまつわる本の数々。
絶版や高価すぎる専門書(2万円以上する平凡社のコケ図鑑など)をのぞき、ここ10年ほどに出版されたコケ関連の本、
図鑑や入門書はもちろん、テラリウム本や、絵本(最近発行されたばかりの『こけこけコケコッコー』(にしはら みのり著)も!)、
『第七官界彷徨』(尾崎 翠著)、『原稿零枚日記』(小川洋子著)、『工場』(小山田浩子著)などのコケが登場する文芸本、
また、コケが好きな人におすすめの地衣類やクマムシ、粘菌にまつわる本、南方熊楠、牧野富太郎、串田孫一などの読み物まで、
約70種のコケまわりの本が一堂に集まるという、コケ好きにはたまらないラインナップになっています。
そして今回、とくにオススメの本には、全国のコケ好きさんたちにお願いしてPOPを書いてもらいました。
普段から本気でコケが好きな人たちばかりなので、書いてある内容もなかなか本気度が高い(笑)。
こちらも今回の企画展のためだけの展示なので、ぜひお見逃しなく!
また、苔テラリウムが本業ながら、コケを「楽しむ」ことにかけてはアイデアマンの道草さん。
苔テラリウムやコケ本、写真展示のほかにも色々と面白いことを企画されているご様子。
最近のツイッターをのぞいてみると・・・
▲苔ガチャガチャを作ったらしい
▲ジャゴケをケースに入れてなにやら体験型の展示物を作ったらしい
▲会場に行かないと参加できないコケクイズを作ったらしい。抽選で苔グッズが当たるらしい
(ちなみにこのコケクイズ、拙著「特徴がよくわかるコケ図鑑」にヒントが隠されていたりします)
とにかく色々用意されているようですので(笑)、見たり、読んだり、体験したり、写真を撮ったりと存分に楽しんでいってくださいませ。(^^)
また、最終日7/17(月・祝)にはトークイベントがあります。
こちらも楽しい会にしたいと思いますので、ぜひお越しください。
入場無料ですが「要事前予約」で、現在すでに定員(約30人)の半分くらい埋まっているとのこと。お早めの予約をおすすめします。
ちなみに同日の苔テラリウムワークショップはすでに定員に達したとのことなのでご了承ください。
※トークイベントの予約はこちらのアセンスさんのHPからどうぞ(電話予約も可)→ ☆
(このブログでは申し込みを受け付けていません)
余談ですが、じつは7月はこの他にも、本町でオカモス関西メンバーによる恒例のコケ写真展があったり、
肥後橋では切り絵作家・いわたまいこさんの個展が始まったり・・・となんだかアツい大阪市内。
いずれもさほど遠くない距離ですので、次回のブログではいかに全展示を効率よく回るかも含め、詳細をお知らせさせていただきます!
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●おまけ
もう2週間前のことになりますが、6/16(金)に荻窪の書店Titleさんでの
コケ図鑑刊行記念トークイベントが、おかげさまで盛会に終わりました。
Titleさんの常連のお客様でコケをほとんど気にして見たことがないという初心者の方から、
植物全般が好きな方、コケの愛好会(岡山コケの会)のメンバーでもう何年もコケを観察してきたというベテランの方まで、
30人ほどがお越しくださり、スライドに交えつつ、皆でコケを観察してみるなど、わいわいとアットホームな会となりました。
コケは、初心者向けにコケの話をする際に定番のスナゴケに加え、
ちょっとマニアックな人向けにニスビキカヤゴケ(噛むと辛い味がする)を持参したのですが、
Title店主の辻山さんがニスビキカヤゴケを噛んだあと「食べ比べないとわからない」と
躊躇なくスナゴケも口にされていたのが、ひそかに衝撃的でした。
〝コケにアツい大阪〟を巡る
暑さにはそれなりに強いつもりだけど(寒い方が断然ダメ)、それでもこの湿度の高さはやっかいなもので、
ここ何日かはクーラーを28.5度(の「弱」)にして、パソコンに向かっております。
さて、今日は前回のつづき。
先の土曜日に〝コケにアツい大阪市内〟を
ぐるぐるっと回ってきたのでそのレポートをば。
今回のコケ巡りで訪れたのは次の3か所でした。
●Book shop&Cafe Calo @肥後橋
2017年7月4日(火)~7月22日(土)
いわたまいこ切り絵展「そこにいる」
●オリンパスプラザ大阪 オープンフォトスペース @本町
2017年7月7日(金)~7月13日(木)
「ちいさな苔の写真展Ⅳ」
※近日終了!:最終日13日(木)は15時までです。
●心斎橋アセンス書店(書店内の多目的スペース「アウラの部屋」) @心斎橋
2017年7月2日(日)~7月17日(月・祝)
「苔の『道草michikusa』プロデュース
道草したい、小さな苔の森 at アウラの部屋」
大阪によく行く方ならおわかりと思うが、会場はいずれも大阪市営地下鉄の沿線。
これら3か所を回るには、四つ橋線と御堂筋線を乗りついでいくのだが
今回は梅田駅を起点に、次の矢印のような順序で回った。
<引用:大阪市交通局>
▲梅田を起点に黄緑色の矢印が今回自分が回った順序
1.まず「梅田」駅から「西梅田」駅までは徒歩。歩いて5~10分ほどかかるが、のちのちラクするためにも最初にここでがんばっておく。
四つ橋線に乗って1つ目の「肥後橋」駅で下車。6・7番出口を出て徒歩1分のCaloへ。
▲Caolのあるビル。看板が出ています
▲エレベーターで5階へ上がるとすぐにお店の入口となる
▲いわたさんの切り絵作品が並ぶ
今回のいわたさんの切り絵展のテーマは「そこにいる」。
自宅のお庭や、いつも歩く道、公園、部屋の中など、
身近にいる生き物たちを切り取った作品ばかりという。
そして嬉しいことにその中には、コケが3作品もあった。
▲奥からゼニゴケ、ウキゴケ、そしてショウジョウバエ。
▲カタツムリの隣に並ぶのはホソウリゴケ
たった一枚の紙からどうやってこのような緻密な作品が作り上げられるんだろう?!という驚きももちろんだが、
少し前に私はいわたさんと一緒にコケさんぽをしたこともあって、彼女がコケに向けていた眼差しが、
今度はこういうふうな形になって還ってくるんだというある種の感慨深さみたいなものも感じた。
ちなみに、Book shop&CafeであるCaloさんはカレーライスが美味しいことでも有名なお店。
お昼頃から出かける方は、ぜひランチはこちらのCaloでカレーを食べられることをおすすめする。
またスイーツも各種あるので、いわたさんの作品を見たあとに本棚を眺めながらお茶するのもまた贅沢な時間だ。
2.さて、Caloを出たら肥後橋駅に戻り、再び四つ橋線に乗って隣駅の「本町」へ。
じつはこの本町駅というのがクセモノで、四つ橋線・御堂筋線・中央線の3線が乗りいれているのだが、
各線の駅がそれぞれに遠く、とくに四つ橋線と御堂筋線は狭い地下道をひたすら10分ほど歩かねばならない。
東京でいうならば、JR新宿駅からメトロプロムナードを通って伊勢丹そばの都営新宿線の新宿3丁目駅くらいまで歩くようなイメージ。
オリンパスプラザ大阪は、四つ橋線本町駅の改札を出るとすぐそこに見えている22・23番出口が一番の最寄なので、
梅田やなんば方面から向かう方は、ぜひここはひとつ四つ橋線を利用していただきたい。
(毎度私の案内が遅くてすみません…)ただし、オリンパスプラザ大阪の「小さな苔の写真展Ⅵ」は13日(木)までなので、
残念だけど会期中に行けないという方は、やはり歩くが四つ橋線・本町駅から御堂筋線・本町駅に乗り換えて「心斎橋」へ行くか、
「四ツ橋」駅まで行っていただいて、徒歩で「心斎橋」駅へ向かっていただければと思います(約5分ほど)。
「小さなコケの写真展」は今回で早くも6回目。
今年も5人のメンバーが、各自好きなテーマでコケの写真を持ち寄って展示している。
▲じつは私も参加者の一人。テーマは「苔暦2017原画展」。先の年末年始で販売したコケカレンダーに使った写真を展示した
▲テーマ「コケを訪ねて」(村井まどか)
▲テーマ「綺麗なコケ、不思議なコケ」(辻久志)
▲テーマ「TG-4で撮るコケの世界」(左木山祝一)
▲テーマ「私の気になるコケたち」(波戸武仁)
会期まで今日を入れてあと2日ですが、常にメンバーの一人が会場に常駐しているので、コケについての質問やおしゃべりもできます。
クーラーもよく効いた会場なので、コケの写真を楽しみながら、ぜひ涼んでいってくださいませ。
▲「TG‐4で撮るコケの世界」をテーマにコケの細胞まで撮っている左木山さんは、オリンパスのコンパクトデジカメTG-4を使った
顕微鏡写真の撮り方解説書を用意。気になる方はぜひ会場でご覧になってくださいね
3.さて、いよいよ最後は心斎橋のアセンス書店で開催中の「苔の『道草michikusa』プロデュース 道草したい、小さな苔の森 at アウラの部屋」へ。
すでに2つ展示を見て、そこそこ気持ちも満たされていることもあってか、本町駅構内の四つ橋線から御堂筋線の徒歩10分移動もそこまで苦ではない。
御堂筋線に乗ってしまえば、たった一駅で「心斎橋」駅に到着。
▲心斎橋駅。本町駅から心斎橋駅へ向かう際、前方の車両に乗るとアセンスの最寄出口5番出口に出やすい。
ホームを上がった先にある大丸のこの看板が目印
▲5番出口を出て、大丸を右手に見ながら心斎橋筋商店街を南(なんば方面)へ徒歩1~2分。
マツモトキヨシが見えたら迷わず店内へ。アセンスはこのビルの3階にある
▲マツモトキヨシの店内奥にエレベーターがあるので、こちらで3階へ
会場には道草さんの苔テラリウムをはじめ、コケにまつわる書籍約70冊、コケクイズ、霧吹きで水をかけて楽しむミニ苔庭や、
ジャゴケの香りを嗅いでみる小箱など、いろいろと趣向を凝らした展示が楽しめる。
とくに今回は書店でのコケフェアということで、全国のコケ好きさんたちのご協力を得て、「オススメの1冊」について書いていただいたPOPも大きな見どころ。
どれもコケ好きだからこそ書けた心のこもった文章。今回のフェアのためだけのものなので、ぜひ会場でご覧になってほしい。
<お知らせ>
フェア最終日の7月17日(月・祝)15:30~、1時間ほどトークイベントがあります。
昨日の時点であと少しお席があるようです。参加費無料ですが要予約。
予約はこちらのアセンスさんのHPからお願いします(電話予約も可)。→ ☆
●おまけ
1週間ほど前、産経新聞の記者の方がアセンスに取材をしに来てくださいました。
本日7月12日の産経新聞(関西版)に記事が掲載されるとのこと。
コケ特集3本立ての記事になる予定とのことで、今回はその第2段。
第1段の記事は↓こちらで読めます。
【近ごろ巷に流行るもの】
「コケガール」に続き「コケ少年」も…関連イベント大盛況「自然を楽しみながら守る」
苔の本棚
▲「道草したい、小さな苔の森@アウラの部屋」 の苔の本棚のなかでPOP紹介した本たち
心斎橋アセンス書店で約2週間にわたって開催していた
「道草したい、小さな苔の森@アウラの部屋」 が7月17日(月・祝)に無事に終了しました。
たくさんの方にお越しいただき、誠にありがとうございました。
フェアの一つひとつの展示物などについては、道草さんのブログが詳しいので、ぜひご覧になってみて下さい。
▲最終日、道草さんの苔テラリウム講座
▲同じく最終日のトークイベント。どちらもありがたいことに満席でした
道草さんもブログに書いておられるとおり、今回のフェアはアセンス書店さんから
「自由にコケな空間を作ってほしい」とおっしゃっていただき、ほぼゼロの状態から道草さんと相談して展示内容を決めていきました。
そのなかで、どうしても私がやりたかった展示がこの「苔の本棚」。
▲コケ関連の本と苔テラリウムがひしめき合う本棚
コケにまつわる、もしくはコケ好きなら思わず手を取りたくなる本を集めた本棚で、
なかでもとりわけオススメの本には、コケ好きさんによる推薦文(POP)をつけるというもの。
「書店で開かれるコケフェアなのだから絶対にやってほしいっ」と初めての打ち合わせの時から
アセンスの担当者Kさんに熱弁し(きっと暑苦しかったと思う…)、図鑑から文芸書まで
約70種のコケ好きが読みたい本、読んでおくべき本を集めていただきました。
ここに、会場に来られなかった方と、POP執筆に協力してくださった遠方のコケ好きさん達に向けて、
全POP15枚の内容を紹介したいと思います。 ※並びは執筆者のお名前から、あいうえお順に。
「粘菌生活のススメ」(著:新井文彦・川上新一 誠文堂新光社)
「粘菌」というのはコケを野外で探していると結構な確立で出会うことができる、小さく不思議な生き物です。
この本ではその粘菌がどんな生活をしているのか、どんな姿をしているのか、
そしてどんな楽しみ方があるのか、奥深き粘菌生活を綺麗な写真盛り沢山で紹介しています。
変形菌と一緒にコケが映っている写真が多いので、コケ好きの方はそれを眺めるという楽しみ方もありますよ。
【池田英彦/岡山コケの会、マイナー生物好きの生物調査屋】
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「苔のある生活」(著:大島恵・木村日出資 日東書院本社)
苔好きには、苔のある生活は当然なのですが(笑)
「苔を育ててんだけど、どれに手を出していいからわからないのよねぇ~」という方には、とても良い本だと思います。
苔玉や、苔テラリウムに、苔盆栽、苔盆景と、苔栽培でも色んなジャンルの作り方を説明してくれているし、
苔の基礎知識、採取方法、増やし方、そして数種類だけど図鑑まで載っている。
ここから、自分の好みに合った、苔のある生活、を知れると思います。
【石倉良信/苔役者】
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「小さな緑の世界 テラリウムをつくろう」(著:ミシェル インシアラーノ・ケイティ マスロウ 草思社)
著者が外国の方なので、日本でよく見るテラリウムと違い、ニューヨーカーの苔のレイアウトの発想が面白い。
苔はジオラマの中の芝生や草木扱いで使われていて、多肉植物や、瓶、石、フィギュアなどの小物のチョイスも良い。
センスの良い物だけあって高価な分、自分では中々真似できないが、レイアウトの勉強にはなる一冊だ。
そして、苔好きの人の苔愛は日本も外国も関係ないことがわかる。
【石倉良信/苔役者】
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「こけこけコケコッコー」(著:にしはらみのり PHP研究所)
ジャゴケやゼニゴケなど普段光の当たらないコケも多数出演!? コケコロッケや話題のコケスイーツも!
リアルコケスイーツを食べた人間としては、ドキドキしちゃいます。
隠れキャラや、細かな小道具の設定など、コケ好きにとってたまらない絵本です。
【石河英作/道草の人】
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「苔の話」(著:秋山弘之 中央公論新社)
活字からコケ入門
文系男子がコケガールの彼女から「コケを見に行きたい」と言われたらどうするか。
まずは他のコケ関連書で美しい写真を予習して、次に本書のしっかりした説明で知識を補完すればまちがいなし!
基本的な苔の生態から人とコケとの結びつきまで幅広く解説され、明解な文章は何度読み返しても新しい発見に満ちています。
あらかじめ知識を蓄えてから実物に向き合いたい人にお勧めです。
【おおた/読書会主催】
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「胞子文学 名作選」(編:田中美穂 港の人)
まず、装丁が奇抜。そして、胞子文学とは何ぞや?
それは、苔、羊歯、茸など胞子で殖える生物のもつ特殊性を胞子性と呼び、その胞子性を宿した作品を呼びます。
最初の作品は永瀬清子さんの「苔について」、苔について語りながら地球生態系のこと、そして人生観を綴っています。
尾崎翠さんの「第七官界彷徨」の表紙は蘚苔類図鑑。読み進めると、
「みろ、人類が昼寝のさめぎわなどに、ふつと蘚の心に還ることがあるだらう。・・・」。
何のことか気になるでしょう? さあ、この本を手に取って、胞子文学の胞子性を探ってみましょう!
【岸本亨/なりたてほやほやの日本蘚苔類学会会員】
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「コケのふしぎ」(著:樋口正信 SBクリエイティブ)
“苔を見てると癒される”“苔ってかわいい!”苔が気になりだすきっかけは人それぞれ。
でも、一度気になりだすと、“苔って花が咲くのかな?”“コンクリートにどうやってくっついてるの??”・・・次々に疑問が湧いてきます。
そんな、苔が気になりだした私たちに“コケなるもの”の生きざまを分かりやすく教えてくれるのが、本書「コケのふしぎ」。
コケの生態から、果てはコケ文学にまで話が及ぶ本書を読めば、気分はもうコケ博士。
超文系人間が読んでもスーっと頭に入る、優れものの1冊です。
【鈴木紫乃/コケ好きの図書館司書】
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「校庭のコケ―野外観察ハンドブック」(著:中村俊彦・原田浩・古木達郎 全国農村教育協会)
コケ観察の本格的な入門書
セン類76種、タイ類42種、ツノゴケ類4種の野外でのコケの生態写真と的確な解説、
さらに特徴をとらえた拡大写真や顕微鏡写真が豊富です。
付録には、「センタイ類を顕微鏡で同定する時の特徴」としてセン類58種、タイ類34種の線画が掲載されていて、
ゼニゴケの仲間に注目している私にはこの線画がとても重宝しています。
他のコケの図鑑と並行して見ることが多く、手放せない本です。
【辻久志/コケ写真愛好家】
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「コケの生物学」(著:北川尚史 研成社)
難しそうなタイトルですが、何冊かコケの本を読まれた方にはおすすめです。
写真はないですが、挿絵が繊細で美しく、丁寧な言葉での説明がよくわかります。
コケそのもののことだけでなく、これまであまり注目されていなかった
コケとコケを取り巻く生きものたちとの関わりについても教えてくれる興味深い本です。
【辻野由喜/コケ勉強中の会社員】
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「苔盆景入門」(著:木村日出資・左古文男 日東書院本社)
大自然の情景を卓上に。
コケにも、様々な表情が…
コケの表現力に注目。
【中川秀行/苔オブジェ専門店「苔なっこ」店主】
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「コケはともだち」(著:藤井久子 リトルモア)
ぼくは、この本がおもしろくて、分かりやすいと思いました。
コケをキャラクターにしてコケの個性をあらわしているので分かりやすかったです。
コケの成長のサイクルやコケスポット、コケの主な生息地、コケの見分け方、コケと仲よくする方法といったことが書いてあります。
コケのことを知りたい方や初心者の方にオススメです。
【中川弘光/コケ少年(小学6年生)】
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「コケ図鑑」(著:藤井久子 家の光協会)
『出たー!』と叫びたくなる待望のコケ図鑑。コケに興味を持ち始めたら迷うことなく、この一冊だ。
ルーペで覗くコケの小さな世界。ページをめくるたびに実物を見たくなる。フィールドに出たとき、「こんなに役にたつとは」と思うことだろう。
生育場所、分布、サイズと要点がまとめられ、更に近縁種の記述は中級者になれば、ありがたさは倍増する。
また筆者のコケ目線からのメモは必見だ。姿、形に特徴のある182種のコケたちは、低地で観察できるものも多く楽しみだ。
さぁ!コケ図鑑片手にフィールドへGo!
【のだふみ/コケ愛好家・海上の森の会 会員】
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「ミクロの森: 1㎡の原生林が語る生命・進化・地球」
(著:デヴィッド・ジョージ・ハスケル、訳:三木直子 築地書館)
テネシーの原生林に1㎡ほどの観察地を設け、1年間通い続けたハスケル博士の記録。
「曼荼羅」と呼ばれるその場所に息づく生物の観察を通して、森羅万象すべての存在が繋がりをもって生きていることを教えてくれる。
全43章の中でコケの章はたった7頁にすぎないが、博士はぜったいコケ好きに違いない!と錯覚するほど
コケに寄り添って観察されているし、進化や生態や味についても書かれており、けっこうコケが褒めてられている(ように思う)。
科学系読み物にしてはかなり詩的で美しい比喩があちこちにちりばめられているので、文系寄りのコケ好きさんにはとくにおすすめしたい。
小さなコケの観察から、さらに感じ取れるものが広がるかもしれません。
【ムシメガネ/岡山コケの会会員】
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「苔とあるく」(著:田中美穂 WAVE出版)
コケ初心者がコケマスターになるための指南書。
元祖コケガールともいえる田中美穂氏の手ほどきで自分にピッタリのコケの楽しみ方が見つけられます。
知らなかったことを知る喜び、ルーペ1つとこの本であなたもコケの世界へ!
【森田/主婦(生息地 杉並)】
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「原稿零枚日記」(著:小川洋子 集英社)
著者の小川さんが「苔とあるく」を読んで発想したという〝苔料理専門店〟が早々から登場し、たちまち奇妙な世界に引き込まれていく。
ルーペ越しの繊細なコケ描写、絶妙なコケチョイスとメニュー、そして独特な食し方はコケ屋視点をも満足させ、興奮させる。
コケ初心者にはぜひとも図鑑を片手に読み進めて欲しいくらいなのです。
【吉田有沙/コケ手芸作家】
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あなたの心が惹かれる1冊はありましたでしょうか。
すでに読んだことがある本でも、その本についての他の人の感じ方や発見を聞くことで、
また手に取ってみようかなという気持ちになったりします。
この夏の読書に加えていただけたら嬉しいです。
最後に、今回のPOP執筆にご協力いただいた
日本各地のコケ好きの皆さまに改めてお礼申し上げます。
<お知らせ>
明日、7月27日(木)TBS系列の朝の報道番組「あさチャン」(メインキャスター:夏目三久さん)の
「あさトク」(7:40頃~10分間ほど)のコーナーで、コケ特集が放送されます。
北八ヶ岳や奥入瀬渓流でのコケの楽しみ方のほか、今回のイベントの様子も少し放送される予定です。
私は各地について、おすすめポイントなども案内させていただいています。
(以下、言いわけ)
自分で言うのもなんですが、私は内心は緊張していても、
あまりそれが顔に出ないみたいで、トークイベントなどはお相手の力もあって、
いつもなんとなく上手く進んでいたつもりでいたのです。
しかし、テレビカメラに撮られながら話すというがどうにも苦手で、
今回はとくに緊張し、表情もガチガチで、噛みまくりました・・・。
なので個人的には、本当はあまり見てほしくないのですが、
各地のコケの名所についてはぜひ知っていただきたくもあり、もどかしい限り・・・。
もし画面に映ったら私の顔を見ないようにお顔は即座に伏せていただき、
お耳で声だけ聴いていただければと思います。よろしくお願いします(懇願!)。
暑中お見舞い申し上げます。
▲ムツデチョウチンゴケの雄株の雄花盤(ゆうかばん)。氷菓子みたい (2017.6月 長野県北八ヶ岳)
暑い。とにかく毎日、えらく暑いです。
とはいえ私自身はもともと暑さにはわりと強いほうで、日に焼けるのもそれほどイヤではなかったりする。
普段から、頭が熱くなるので日傘くらいはさすけれど、アームカバーは解せない派(←どうでもよい情報ですがっ)。
じりじり焼けるアスファルトの上で街路樹のクマゼミやアブラゼミの数を数えたり、
青い空と桃色のサルスベリの見事なコントラストをぼーっと眺めたり、
洗濯ものの乾きの早さに感動したり、この暑い日々をそこそこ満喫中だ。
一方で、暑いからこそ「涼を感じる」というのもまた夏ならではの楽しみ。
というわけで、今日は視覚的に涼しさ満点、
6月に行った北八ヶ岳の森から、
涼しげなコケたちをおすそ分けいたします。
気分だけでも少し涼しくなりますように。
▲ムツデチョウチンゴケの群落。雄株の雄花盤はまるで緑の花
▲下から回り込んで見ると・・・虫の目線から見たコケってこんな感じなのかな
▲ムツデチョウチンゴケの胞子体つき雌株。ムツデ(六手または六出?)の名前の通り6本の胞子体をつけていることは、じつは意外と少ない
▲一方こちらはスジチョウチンゴケの雌株。ムツデチョウチンゴケの圧倒的存在感の影に隠れがちだが、こちらもぷっくりとした蒴(さく)がかわいらしいこと
▲スジチョウチンゴケの雄株。透きとおるように薄い葉。1枚拝借してうちわにしたい
※事実、分類は「ウチワチョウチンゴケ属」に属するコケだったりします
▲スジチョウチンゴケの雄株の雄花盤。雄株の雄花盤は、なんてフォトジェニック!
その花のような容姿ゆえ、チョウチンゴケ科の仲間を見ると、ついつい雄株ばかりに目がいってしまうが、
雌株の面目も立てるべく、最後に「チョウチンゴケ科のヴィーナス」と自分が勝手に呼んでいるこのお方もご紹介。
じゃじゃん!
▲タチチョウチンゴケ。東南アジアが主な生育地で、日本では南方に多い。絶滅危惧種(2015.12月 兵庫県)
このたわわな胞子体。
あるものにそっくりなことから通称があるのですが、
何かわかるでしょうか?
正解は・・・・・・「オッパイゴケ」。
そう言われると、見るほどにどこもかしこもオッパイに見えてくる不思議。
あ。ただでさえ暑いのに、最後の最後でドキドキさせちゃってスミマセン・・・。
皆さま、楽しい夏を!
『知りたい 会いたい 特徴がよくわかるコケ図鑑』が3刷目になりました&コケ情報(雑誌にコケ特集あり)
▲獅子ヶ鼻湿原にて(2017.8月 秋田県)
残暑お見舞い申し上げます。
関東は不安定なお天気が続いているそうですが、関西はあいかわらず暑いです。
お盆休みは山形で過ごしたのですが、あちらは朝晩がとても涼しくて、久々に快適に眠ることができました。
さて、8月18日付で『知りたい 会いたい 特徴がよくわかるコケ図鑑』(家の光協会)がおかげさまで3刷目に入りました。
一時、書店やAmazonで品切れ状態でご迷惑をおかけしましたが、在庫も補充されているようなので、また見かけたらお手にとっていただければ幸いです。
なお、3刷目からは何種類かのコケの線図を改定、蘚類・苔類のインデックスのズレも改善されています。
(すでに1刷目、2刷目をお持ちの方は、お持ちのものがボロボロになったら3刷目をぜひ!)
▲文教堂二子玉川店さん(東京)でのディスプレイ。筆者の「タマゴケのおすすめポイント」を書いた手書きPOPとともに
▲農業書センターさん(東京)でのディスプレイ。
こちらもかわいいコケキャラクターとともに本物のコケを一緒に展示してくださっています
ちなみに本書でコケの生態により興味を持たれた方は、
本書の監修をしてくださった秋山弘之さん(兵庫県立人と自然の博物館)の『苔の話』(中央公論新社)がおすすめです。
通勤・通学中にも読みやすい新書サイズ。この夏の1冊にぜひ。
以上、ちょっと宣伝でした。 m(__)m
【コケ情報】
現在発売中の雑誌『岳人』(9月号)と『山野草とミニ盆栽』(夏号)はもうご覧になりましたか?
『岳人』にはコケ研究者・木村全邦さん(森と水の源流館)のインタビュー記事「コケの生態学」が4ページで掲載されています。
コケの生態の基本を抑えつつ、「食べてみました」「コケを愛でる日本人の美意識」「大阪・ミナミの水掛不動の謎」など初心者が楽しんで読める話題が満載です。
ちなみに木村さん、『こけの謎-ゲッチョ先生、コケを食う-』(盛口満著、どうぶつ舎)では、
「コケ屋のキムラさん」として登場している、あの木村さんです。
また、『山野草とミニ盆栽』では特集1「苔を楽しむ」として16ページが組まれ、北八ヶ岳のグラビアページに始まり、
岡山コケの会関西支部世話人の道盛正樹さんや、関西では知る人ぞ知るコケ育ての達人・田上順一さん、
「コケのインテリア コケリウム」主宰の岡村真史さんらが執筆・登場。
「新感覚のBONSAIたち」と題した特集2では6ページにわたり盆栽家・園芸家の方々のインタビュー記事が掲載されています。
いずれもカラーページでとても読みやすいですよ。
●おまけ
この夏に訪れた和歌山県と秋田県でコケを見に山を歩いていたところ、腐生植物なるものと遭遇。
これまで腐生植物といえばギンリョウソウを5年ほど前に1度見たきりだったので、最初はこれらがいったい何かわからず。
とくに初めて見たヒナノシャクジョウは「これはもしや新種のキノコかも?!」と発見時はちょっと興奮してしまいました。
▲ヒナノシャクジョウ(2017.8月 和歌山県)
▲おそらくギンリョウソウの古株(2017.8月 秋田県) ←(追記)ギンリョウソウではなくおそらく「タシロラン」だろうとのご指摘をいただきました。失礼しました!
南方熊楠をめぐる旅 (その1)
【お知らせ】
9月11日、2014年発行の『コケに誘われコケ入門』(文一総合出版)の新訂版が出ました。
コケの基本をしっかり押さえているのは前作そのままに、コケ図鑑ページが50種からなんと100種に大幅増量。
表紙、グラビアページ、顕微鏡写真のページが一新していたり、コケを使った遊びの紹介まであったりと、
すでに前作を持っている人にも「これはやっぱり買わねばなるまい!」と思わせる心憎い内容になっています。
文一総合出版のホームページには「立ち読み」ページも載っていますので、ご興味がある人はぜひ。
▲『生きもの好きの自然ガイド このは7 新訂版 コケに誘われコケ入門』定価1,728円(本体1,600円+8%税)
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さて、春に本作りも一段落して、時間の余裕が少し出てきた今日この頃。
この夏は、長らく〝積ん読〟になっていた本や、人から勧められた本を読んだり、
気になっていながらずっと行けていなかった場所を訪ねてみたりしていた。
この春までの「とにかくゴールに向かってできる限りを尽くして突き進む」という本制作の時間の使い方とはまた違った、
「どこに行くかは自分でもよくわからないけど、なんとなくピンとくる方に進んでみる」みたいなことを少し意識してやっていた夏だった。
(私だけかもしれないが、夏はそういう「どこ行くあてもない」ことをするのにぴったりだと思う)。
その一つとして、8月初旬に出かけたのが和歌山県の海沿いの街。
コケやキノコ関係の本を読んでいてたびたび名前を見かけては、
その存在がずっと気になっていた「南方熊楠」の足跡をたどる旅へ出かけた。
南方熊楠(みなかた くまぐす)とは、明治から昭和までを生きた和歌山県出身の学者(74歳で没)で、
私が普段よく話をするコケ屋界隈、生き物屋界隈の人々の間では周知の人物だ。
しかし一方で、幼なじみ(基本的にみんな文系)や分野外の知人には、「誰それ?」と名前さえ知らない人も多い。
熊楠を知っている人ならば誰もが思うように、この人のことをひと言で表すのはとても難しい。
粘菌やキノコなど隠花植物を日本で先駆けて追いかけた生物学者であり、
柳田国男とも交流が深かった民俗学者であり、夢や神話、哲学、性科学などにも精通していたという、人呼んで「知の巨人」。
20~30代の十数年間はアメリカ、キューバ、イギリスへ海外留学し、キューバでは新種の地衣類を発見。
十数か国語を理解したといわれ、イギリスの科学雑誌『Nature』に投稿・掲載された論文は50以上、
その投稿数の記録はいまだ破られていない(らしい)。
40代の頃は、「エコロジー(生態系)」という言葉の概念を日本でいち早く理解して使い、
日本各地の鎮守の森を国の伐採計画から守るために、地域の神社を統合する「合祀令(ごうしれい)」に猛反対した。
一時はそのせいで投獄されるも、結果的には世論を動かして法律の廃止に至らせる。
60代では、学者としての功績が認められ、キャラメル箱に入れた標本を携えて
和歌山を訪れた昭和天皇に、粘菌についてご進講(これが一番有名な話かも)。
国内外でそれだけの偉業を成し遂げながらも、どこの組織にも属さない生涯フリーの研究者で、
採集した動植物を公に発表することにはそこまで興味がなく、たとえば植物は植物分類学者の牧野富太郎や
岡村周諦(日本の蘚苔類学の草分け的研究者)に送って、代わりに新種として報告してもらっていたりした。
家族や友人、弟子たちのサポートだけを頼りに、森羅万象の成り立ちを追いかけ、
そのすべてを日記をつけるようにひたすら記録し続けた在野の学者。
これだけのトピックを並べてもまだその半分は取りこぼしているくらい、
とにかく熊楠がその一生でやってきたことは質量ともに常人のそれとは桁違いなのである。
さらに、無類の大酒飲みかつ癇癪持ちで、一度怒ると手が付けられなくなって暴力事件を起こすこともしばしば。
40代までは女性と交わったことがなく男色で、植物採集のために入った那智の森では霊的なものとも交信していたとか、
特技は自分の意思で自由自在に嘔吐することだったとか、その人となりについても、信じがたいほどにエキセントリックなエピソードばかり・・・。
これまで南方熊楠についての読み物を何冊か手に取ってみたが、
「本当にそんな人いたの?」「後世の人が勝手に話を膨らませてるんじゃなくて?!」
と知れば知るほど、なんだか疑念が湧くわばかりで、その姿はますますぼんやりとしてしまうのだった。
そのようにして何年も過ぎゆくうちに、この夏。
2017年はちょうど南方熊楠の生誕150周年という情報をネットか何かで知った。
ゆかりの地では熊楠にちなんだイベントが多いという。
よし。どんな人なのか、よい機会だから自分自身で行って確かめてみよう。
結局、先人たちと同じようにその足跡をたどることしかできないが、
現地に行ったからこそ感じられることがきっとあるはず。
そんなわけで8月最初の金曜日の朝、熊楠が長く住んでいた和歌山県の紀伊田辺に向かうべく「特急くろしお」に飛び乗った。
▲車中から眺めた太平洋
紀伊田辺の駅から徒歩10分ほど、住宅街の中に突如として現れるのが「南方熊楠顕彰館」だ。
ここでは南方熊楠の蔵書や資料を恒久的に保存し、広く一般に公開している。
▲南方熊楠顕彰館の入口
この日は特急くろしおで移動中、紀伊半島を南下し始めたあたりから雨がざあざあ降りで、
紀伊田辺の駅に降り立った時にちょうど雨は上がったものの、肌はどこもかしこもじっとりとまとわりつくような湿気に包まれていた。
とはいえ、そんなに悪い心地はせず、むしろ普段、瀬戸内海式気候に慣れ親しんでいる者としては、
太平洋につき出た紀伊半島を想像しながら「これぞ多雨多湿な太平洋岸式気候!」とひそかにわくわくしていた。
南方熊楠がこの地でこのような空気に包まれながら研究の日々を送っていたのだと思うと、さらに気持ちが高ぶる。
高湿度の屋外とは対照的に館内はクーラーがよくきいており、
平日の昼間ということもあってほとんど人けもなかった。
▲館内。1階は主に熊楠の偉業別にその詳細をまとめたパネルが展示がされていた
▲2階。熊楠が存命中の新聞記事をはじめ、南方熊楠にまつわるさまざまな資料を手に取って読むことができる
▲熊楠の日記(レプリカ)と晩年の写真
▲右は植物採集用の野冊。左は植物採集に出かける際の一コマを収めた写真だが、
じつは「こんな格好で採集に行くんですよ」というのを見せるための〝やらせ〟写真なのだという
▲昭和天皇にご進講の際に献上したキャラメル箱(レプリカ)。この大きな箱の中にいくつも標本を収めていた。
キャプションには「桐の箱も用意していたが、手袋をはめて桐の箱のふたを開けるのは困難なので、キャラメル箱で献上したと言われている」とあった
1階、2階と館内をゆっくりと一周したあと、もう一度1階に戻り、
一番奥の展示室で開催中だった企画展「標本から読み解く南方熊楠」へ。
▲企画展のポスター。展示担当は、土永知子(和歌山県立田辺高等学校教諭) 、土永浩史(和歌山県立神島高等学校教諭)、
萩原 博光(国立科学博物館名誉研究員)、大和茂之(京都大学瀬戸臨海実験所助教)による(敬称略・あいうえお順)
この企画展の展示物はすべて撮影禁止だったのでここには載せられないが、展示内容がとてもよかった。
熊楠が採集した海産生物や植物の標本、彼が記した観察記録、図譜などの実物が拝めたことはもちろん、
それらにまつわるエピソードが本展の展示を担当された熊楠研究者たちによって丁寧に解説されていた。
やっぱり肉眼で実物を見るということは大切で、熊楠の屈強そうな見た目とは裏腹に、スマートで流れるようにさらさらと書かれた標本袋の筆記体、
茎葉の長いものなどはところどこを几帳面にテープでとめながら、丁寧に押し花状にされた高等植物やシダ類の標本、
ネットや本で見ていたよりもずっと淡く優しい筆致のキノコの図譜、そしてそれらを眺めながら添えられた解説文を読んでいくと、
これまで私の中の熊楠像のほとんどを占めていた「奇人」とはまた違った彼へのイメージが浮かび上がってきたのだった。
たとえば、それはどんなふうかというと、成果が出ようが出まいが決して手を止めることなく地道にこつこつと採集活動・標本整理を続けている姿や、
人よりも頭何個分も抜きん出ていながらも、じつはとても負けず嫌いで他人のこともちょいちょい気になり、悔しい時は大人げないほど正直に悔しがる姿、
とはいえ決してメゲたり恨んだりすることなく、それをバネにしてまた研究に打ち込もうとする姿など。
このような姿が自然と頭に浮かんできて初めて私は熊楠に親近感が持てたような気がした。
もちろんこれは単に想像にすぎないし、もし事実であっても、このようなことはすでにどこかの本で語り尽くされているのかもしれない。
ただ、実物を見てそう感じた、ということが今回の私の旅ではとても重要だったと思う。
ちなみに撮影禁止ということから、解説文で気になったところはすべてメモを取っていたので、
気付いたら1時間以上もさほど大きくない展示室に一人でこもっていた。
きっと顕彰館スタッフの人からしたら、なかなか企画展から出てこないアヤシイ人だったかもしれない(すみません…)。
ここまでずいぶん長々と書いてきたが、コケ関連でメモしたことをせっかくなのでこのブログにも記しておきたい。
<気になったエピソードのメモ(主にコケ関連)>
※企画展の解説文から私個人が勝手に要約したメモ書きなので、正確でない部分があるかもしれないことをご了承ください。
・クマノチョウジゴケ
唯一、南方熊楠の名前が残されている蘚類。学名は「Buxbaumia minakatae」。
道端でつまずいた倒木を後ろの人のために取り除こうとした時に発見。最初はキノコの仲間と思って採集したようだ。
英国産のウチワチョウジゴケとよく似ていると思ったが、大きさや生育場所の違いから別種と推測。
同郷出身のコケの研究者・岡村周諦に送って確認してもらい、新種として発表してもらう。
葉や茎が退化したこのユニークなコケが見つけられたのも、熊楠が普段から菌類や変形菌に興味を持ち、
その類への観察眼が鋭かったからだろうとのこと。
・イソベノオバナゴケ(現:ホウライオバナゴケ/シッポゴケ科)
塩性蘚類で、1911年『植物学雑誌』に岡村周諦が国内で初めて本種を発表。これも採集したのは熊楠だった。
現在の白浜町(和歌山県)にあたる西牟患郡湯崎の海岸で採集。
それまで海岸に生育するコケは国外で数種が知られていたが日本では記録がなかった。
しかし、熊楠は子どもの時からすでにこのコケの存在を知っていたようだ。
ただ、後の1970年代にこのコケのタイプ標本を水谷正美博士(服部植物研究所)が詳細に調べたところ、
他の蘚類と比べて特段に塩分が多く含まれている可能性は低いとしている。
※『日本の野生植物 コケ』(平凡社)でも「ホウライオバナゴケ」を引いてみたが〝塩性〟の記述はなく、生育場所も「地上や土に覆われた岩上」とだけある。
・隠花植物への興味
留学先のアメリカのアナーバーの農学校で、植物・菌類のアマチュア学者ウィリアム・カルキンスと知り合ったことが、大きく影響している。
高等植物の標本・スケッチなどに一応のめどがつくと、熊楠は隠花植物も同様の手法で採集・整理を行っていくようになる。
なお同時期、高等植物についてはすでに牧野富太郎などによって美しいボタニカルアートが描かれ、図鑑として出版されつつあった。
それを知った熊楠は、まだ図鑑もできていない菌類や藻類により時間と労力をかけたいと思っていたという。
・ギアレクタ・クパーナ
熊楠自慢の地衣類。1891年(明治24年)、熊楠が24歳の時にキューバで採集し、
研究の師であったW・カルキンスを通じて植物学者のニイランデル(仏人)が新種として発表。命名もニイランデルが行った。
本種はサラゴケ科サラゴケ属の痂状地衣で、石灰岩性の岩上を好む。熊楠はこういった固着性地衣類にも興味を示し、
岩石を割るためのハンマーやタガネなどを用意し、本格的な採集を心がけていたようだ。
・熊楠の蘚苔類の採集標本点数
熊楠が海外留学を終えて帰国したのは1900年。33歳の時だった。
そこからコケや地衣類の採集が始まり、34歳で勝浦、35歳で那智(ともに和歌山県)へ移ってからは、どんどん採集点数が増えていった。
39歳で結婚して田辺に移り、42歳の頃がもっとも蘚苔類の採集が多く、標本の数は1年で200点を超えた(もちろん他の動植物の採集もしつつ)。
ちなみに地衣類の採集数のピークは1902年、熊楠35歳の頃。那智に滞在中、1年に約300点弱を集めた。
以降、採集記録がまったくない年もあるが、40代以降も蘚苔類の採集活動は続き、最後の記録は1935年、熊楠が68歳の時である(おそらく数点のみ)。
なお、高等植物の採集は、熊楠が74歳で没した1941年まで行われていた記録が残っている。
▲顕彰館のエントランス近くに展示されていたハンマーなど。これで岩場の地衣類を採集していたのかも
最後に、常設展示で忘れられないのが熊楠が息子・熊弥(くまや)のために手に入れたというこの顕微鏡だ。
この時代の顕微鏡がいかに貴重か。熊楠は40代で息子と娘をもうけているが、とりわけ息子には期待をかけ、かわいがっていたようだ。
しかし熊弥は10代の後半で突如、精神を病んでしまう。
発病の原因は不明だが「熊楠の息子」であることが精神的な重荷となったともいわれる。
熊楠は大きなショックを受けつつ、熊弥が自宅療養中は研究活動もしながら看護もし、熊弥の様子を克明に記録した。
自分が死ぬ間際まで熊弥のことを心配していたという。
しかし結局、熊弥は熊楠亡き後も病状が全快することはなく、52歳で没している。
この顕微鏡は熊弥が何歳くらいの時に購入したものなのか、展示の中ではとくにその解説はなかった。
発病後の熊弥は、発作が起こると感情が抑えられず、時に熊楠の大切な標本を投げ散らかしたり、図譜を破ったりもしたそうだ。
果たして、親子にこの顕微鏡を一緒にのぞいてコケや粘菌の世界を楽しむ穏やかな時間が少しでもあったのだろうか。
コケ画-T、MOSS-Tの2017年受注販売用フライヤー&ご注文方法
◆ご注文方法◆
ご注文は1~3を入力の上、タイトルを「コケTシャツ注文:○○○(注文者のお名前)○○○ 」として、
mosstproject◇yahoo.co.jp (メール時に「◇」を「@」に変えてください)
までメールをお願いします。
※当ブログ左欄にある「メッセージを送る」とはアドレスが異なるので、ご注意ください。
-------------------------下記をコピー&ペーストしてメール時にお使いください--------------------------
1.お客さま情報
お名前:
Tシャツの送付先:〒
電話番号:
メールアドレス:
2.注文内容(必要ない個所は削除して下さい)
Tシャツタイプ:コケ画-T/MOSS-T
色:コケ画-T(ホワイト or 杢グレー)/MOSS-T(ホワイトのみ)
サイズ:コケ画-T(80・90・100・110・120・130・140・150・160・W-M・W-L・S・M・L)
MOSS-T(80・90・100・110・120・130・140・150・160・W-M・W-L・S・M・L)
枚数:コケ画-T( 枚)/MOSS-T( 枚)
3.合計枚数 枚
-------------------------コピー&ペーストここまで-----------------------------------
<記入例> ※複数のタイプを注文される場合には、以下のように別々で記載をお願いします。
Tシャツタイプ:コケ画-T
色:コケ画-T(ホワイト、杢グレー)
サイズ:コケ画-T(いずれもS)
枚数:コケ画-T(2枚)
Tシャツタイプ:MOSS-T
色:MOSS-T(ホワイトのみ)
サイズ:MOSS-T(100)
枚数:MOSS-T(1枚)
合計枚数 3枚
-----------------
<補足>
※ご注文メールを頂いてから、基本3日以内にはこちらから確認メールを差し上げます。
3日以上たっても確認メールが届かない場合には、お手数ですがご一報ください。
※スマートフォンやパソコンの個々の設定によって、こちらからの返信が「迷惑メール」としてはじかれる場合があります。
連絡を取る最終手段として、必ず電話番号のご記入をよろしくお願いします。
※フライヤーに記載されていない指定外のサイズがご希望の場合は、お問い合わせください。
●代金について
ご注文メールをいただいた方各々に振込先をお知らせします。
こちらからの請求代金はTシャツ代と送料の合計となります。
振込手数料はお客様の御負担でお願いします。
(入金確認後の発送となります。)
●ご注文期間と納品時期について
2017年10月8日(日)までにご注文いただき、 11月中旬発送。
※Tシャツ工場の都合により大幅に納期が遅れる場合はお知らせします。
●発送方法について
1枚の場合は日本郵便の「レターパックライト」で発送します(送料360円)。
2枚以上の場合は「レターパックプラス」で発送します(送料510円)。
※レターパックプラスに入りきらない枚数をご注文の場合は個々に対応させていただきます。
【お知らせ:10/8(日)まで】 久々の「コケ好きによるコケ好きのためのコケTシャツ」購入希望者募集!
▲あの「コケT」がラインアップ豊富にかえってきました!
コケ好きによるコケ好きのためのコケTシャツをお届けするMOSS-T PROJECTより久々のお知らせです。
このたび期間限定で、コケ画-TシャツとMOSS-Tシャツの復刻版を受注販売いたします!
※MOSS-T PROJECTとは
九州のコケ友・Mさんと私で2012年に結成。コケのTシャツが巷にないことから、
自分たちで着たいTシャツを作ろうと意気投合したのが結成のきっかけ。(詳しくは過去の投稿をご参照→☆)
完全にコケ好き2人の趣味企画だったにもかかわらず、ブログで購入希望者を募ったところ
予想以上の注文をいただいたことから、以来、不定期で受注販売をしています。
なにせコケ好き二人の趣味企画なもので、ここ数年は毎年11月に京都で開催の「苔・こけ・コケ展」の会場のみで販売していたのですが、
京都まで足を運べない遠方の方や、最近このブログを読まれるようになった方などから、
「あのTシャツって次はいつブログで販売するんですか?」という質問をたびたびいただいておりまして…。
なんだかんだと二人とも忙しくてなかなかご希望に添えなかったのですが、
ようやく重い腰を上げ(?!)、期間限定でブログからの受注販売を再開いたします。
申込み期間は本日9月27日(水)~10月5日(日)までです。
↑(と書いておきながらブログのアップに手間取ってしまい、日付変わって28日(木)~です。すみません~!!)
これからちょっと長いですが、初めてこのTシャツのことを知る方のためにも、
まずはTシャツの種類とその特徴についてご案内します(申込み方法は末尾に記してあります)。
ご興味のある方は下記をご一読ください。
その1 : コケ画-T(version.2013復刻版)
(色:ホワイトまたは杢グレー・半袖・バックプリントあり・価格:80~130㎝サイズ 2,300円/140㎝~Lサイズ2,800円+送料)
▲左:杢グレー/100㎝サイズ、右:ホワイト/Sサイズ
1.生地色は「ホワイト」と「杢グレー」の2色
2013年当時と同じく2色展開ですが、今回は「ヘザーグレー」(2013年版で使用)を「杢(もく)グレー」にプチリニューアル。
杢(もく)グレーは別名「霜降り」と呼ばれ、濃淡の2色で織り交ぜた杢糸を使用。
これまでのヘザーグレーよりも柔らかい雰囲気の生地色となります。
2.表面プリントは蘚苔類の代表選手、スギゴケ、ゼニゴケ、ツノゴケを紹介
画を描いてくださったのはイラストレーターのクラミサヨさん。
「コケって何?」の質問に答える時もこの画を使えば話が早い!
3.バックプリントに「Just Looking For the MOSSES!」
コケ観察の最中、通りがかりの人に怪しまれないように、背中で「コケ好き」であることが語れます。
これでコケ観察を中断することなく『ただいまコケ観察中!』ということをアピールできます。
4.幅広いサイズ展開が実現!
今年は初の試みとして、新たにベビー&キッズサイズをラインアップに加えました。
コケがお好きな小学生・中学生の皆さんのフィールド用に、
コケ好き予備軍(?!)の小さなお子様の普段着にもオススメです。
実際に2歳児が100㎝を着用するとこんな感じ。
▲子供着用例:杢グレーの100㎝を着用。モデルは2歳8か月男児。
身長90㎝強(月齢のほぼ平均的な身長。ただし、お腹はちょっと出っ張りめ)
▲「おやおや、小さな子がそんなところで何をしているの?」と通行人が心配に思った場合にも・・・
▲ベビー&キッズサイズにも「Just Looking for the Mosses!」のバックプリントがあるのでご安心ください
▲大人とおそろいで着ると、さらにコケ観察が盛り上がることまちがいなし!
大人サイズもこれまで通り、男女兼用のS-Lサイズと、
男女兼用サイズより襟ぐりが広めで全体的にややスマートな形の
レディースサイズ(W-M、W-L)を揃えています。
ちなみに私の場合(女性・身長164センチ・中肉)、男女兼用サイズなら「S」、
レディースサイズなら「W-L」を着ています。
また「SサイズやW-Lはちょっと大きいかも…」という小柄・細身な女性には、
「W-M」やキッズサイズの150㎝・160㎝などがおすすめです。
▲大人の着用例:男女兼用Sサイズを着用。男性でも細身で肩幅がそれほど広くない方はSサイズでもよいと思います
その2 : MOSS-T
(色:ホワイトのみ・半袖・価格:80~130㎝サイズ 2,300円/140㎝~Lサイズ2,800円+送料)
MOSS-T PROJECTが始動した2012年から定番品として販売しているTシャツです。
ご覧の通りかわいめのイラストなのでてっきり女子人気が高いかと思いきや、わりと大人の男性にも人気。
先のコケ画-Tに比べてよりカジュアル着として使いやすい一枚です。
▲絵は僭越ながら藤井が担当。20種のコケが協力して「MOSS」の文字を作り上げています。ぜひ何ゴケか当ててみてくださいね
▲カラーはホワイトのみ。サイズ展開はコケ画-Tと同じ。ベビー&キッズサイズもあります(写真は100㎝)
▲先ほどと同じモデルが100㎝を着用。MOSS-Tにはバックプリントはありません
なお、2017年11月10~12日に京都府立植物園で開催の「苔・こけ・コケ展」の会場では
大人向けのS~Lサイズ・レディースサイズは各サイズ何枚かずつを販売します。
すでに本企画展に行かれることをご予定されている方は、現地で送料なしのTシャツ代のみ(2,800円)の価格でご購入できます。
とはいえ、行かれたタイミングによってはすでにご希望の色・サイズが売り切れという可能性もあります。
物販ブースでは、私たちではなく専門の販売員さんが立たれるため、個人向けに取り置きもできません。
確実にTシャツを購入したいという方は送料はかかってしまいますが、このブログからのご注文をおすすめいたします。
また、ベビー&キッズサイズ(80~160㎝)は完全ブログのみでの受注販売となり、「苔・こけ・コケ展」での販売はないことをご了承ください。
◆ご注文方法◆
さて、長~くなってしまいましたが、最後に「ご注文方法」についてです。
サイズなどの詳細は、下記のフライヤーをご参照ください。
ご注文は1~3を入力の上、タイトルを「コケTシャツ注文:○○○(注文者のお名前)○○○ 」として、
mosstproject◇yahoo.co.jp (メール時に「◇」を「@」に変えてください)
までメールをお願いします。
※当ブログ左欄にある「メッセージを送る」とはアドレスが異なるので、ご注意ください。
-------------------------下記をコピー&ペーストしてメール時にお使いください--------------------------
1.お客さま情報
お名前:
Tシャツの送付先:〒
電話番号:
メールアドレス:
2.注文内容(必要ない個所は削除して下さい)
Tシャツタイプ:コケ画-T/MOSS-T
色:コケ画-T(ホワイト or 杢グレー)/MOSS-T(ホワイトのみ)
サイズ:コケ画-T(80・90・100・110・120・130・140・150・160・W-M・W-L・S・M・L)
MOSS-T(80・90・100・110・120・130・140・150・160・W-M・W-L・S・M・L)
枚数:コケ画-T( 枚)/MOSS-T( 枚)
3.合計枚数 枚
-------------------------コピー&ペーストここまで-----------------------------------
<記入例> ※複数のタイプを注文される場合には、以下のように別々で記載をお願いします。
Tシャツタイプ:コケ画-T
色:コケ画-T(ホワイト、杢グレー)
サイズ:コケ画-T(いずれもS)
枚数:コケ画-T(2枚)
Tシャツタイプ:MOSS-T
色:MOSS-T(ホワイトのみ)
サイズ:MOSS-T(100)
枚数:MOSS-T(1枚)
合計枚数 3枚
↓↓↓フライヤーです↓↓↓ ※もっと大きな文字で読みたい方はこちらへ(別ウィンドウが開きます)→ ☆
<補足>
※ご注文メールを頂いてから、基本3日以内にはこちらから確認メールを差し上げます。
3日以上たっても確認メールが届かない場合には、お手数ですがご一報ください。
※スマートフォンやパソコンの個々の設定によって、こちらからの返信が「迷惑メール」としてはじかれる場合があります。
連絡を取る最終手段として、必ず電話番号のご記入をよろしくお願いします。
※フライヤーに記載されていない指定外のサイズがご希望の場合は、お問い合わせください。
●代金について
ご注文メールをいただいた方各々に振込先をお知らせします。
こちらからの請求代金はTシャツ代と送料の合計となります。
振込手数料はお客様の御負担でお願いします。
(入金確認後の発送となります。)
●ご注文期間と納品時期について
10月8日(日)までにご注文いただき、 11月中旬発送。
※Tシャツ工場の都合により大幅に納期が遅れる場合はお知らせします。
●発送方法について
1枚の場合は日本郵便の「レターパックライト」で発送します(送料360円)。
2枚以上の場合は「レターパックプラス」で発送します(送料510円)。
※レターパックプラスに入りきらない枚数をご注文の場合は個々に対応させていただきます。
今回は申込み期間が10日間ほどと短めで申し訳ありませんが、
多くの方のご注文をお待ちしています。m(__)m
▲コケ観察中?! でもルーペの使い方がちょっと違うと思うぞ!
【コケ情報】11月10日(金)~12日(日) 「苔・こけ・コケ展2017」開催 /「苔暦2018」を鋭意制作中です
季節外れの台風が予想以上の猛威を振るい、関西ではいくつかの川が氾濫したようでした。
皆さまのお住まいの地域は、大事はなかったでしょうか。
10月初旬に申込みを締め切ったコケTシャツは、
おかげさまで今回もとてもたくさんの方にご注文いただきました。
ご注文いただいた方、ありがとうございました。
出来上がり次第、またご連絡しますので楽しみにお待ちくださいませ
(お振込が確認できた方から順次発送いたします点、ご了承ください)。
なお、締切日までにご注文いただいた方には、すでに全員に返信をしておりますが、
その後、何人かの方に返信が届いていない旨のご連絡を受けました。
万が一、「注文したのに何の音沙汰もないよ」という方がまだいらっしゃいましたら、
YahooのTシャツ注文専用メールアドレス(下記の記事をご参照)にご一報いただけると助かります。
さて、そんなこんなで10月下旬に突入ですが、ここでコケ情報です。
年に一度のコケのビッグイベント「苔・こけ・コケ展」が今年も京都府立植物園で開催されます!
毎年お越しの方も、初めての方もぜひ、コケの美しさやコケの不思議を体感しに会場へお越しくださいませ。
◆11/10(金)~12(日)「苔・こけ・コケ展2017」開催◆
▲フライヤーです。関西の植物園や博物館を中心に配布中
今年も3日間の会期中は午前も午後もイベントが満載です。
このフライヤーの画像では小さすぎてイベント内容が読めないと思うので、
京都府立植物園のホームページで案内されている「週刊植物園」より
該当部分を抜粋し、下記に紹介させていただきます。
◆会期とイベント内容◆
▲「週刊植物園 №233」より(2017年10月20日号、京都府立植物園ホームページより)
ご覧になっていただいておわかりのとおり、今年から「講習会」については
事前に往復はがきで申込み→多数の場合は抽選という募集形式になりました。
そしてはがきの締切が10/25(水)(つまり明後日!)となっております。
毎度のことながらこのブログで案内するのが遅くなってしまい、すみません。m(__)m
こうなってくると「それでも興味がある方は申込みしてくださいね」なんて無責任なことは書けないなと思い、
念のために先ほど電話で、京都府立植物園に直近の申込み状況を聞いてみました。
そしたらば、なんとすでになかなかの応募者多数になっていて(!)、
植物園スタッフの皆様も「コケのイベントはなぜだか人が集まってくる…」と驚かれているとのこと。
というわけで、もし事前申込みが必要なイベントに参加してみたいという方は、どうかお急ぎください。
植物園スタッフの方のお話では「10/25の当日消印有効にさせていただきますので!」とのことでした。
なお、もし25日を過ぎて投函してしまっても、募集人数の多いイベントで定員に至っていなかった場合は参加可能、
またキャンセルが出た場合などは、当日に参加を受け付ける可能性もあるということです。
詳しくは、京都府立植物園へお問い合わせくださいませ。
※注)このブログでは質問を受け付けられませんのでご了承ください。
-------------------------------------
<イベント申込み方法>
・往復ハガキに講習会名、希望日・希望回、住所、氏名、電話番号を明記(申込多数の場合は抽選)
・申込期限:10月25日(水)
京都府立植物園
〒606-0823
京都市左京区下鴨半木町
電話 075-701-0141
・京都府立植物園ホームページ→☆
・イベントスケジュール詳細→☆
(スクロールしてページ中ほど「平成29年11月」のところをご覧ください)
-------------------------------------
また連日、野外のコケ観察会や講演会など予約のいらない先着順のイベントや
多彩なコケ写真・種類豊富な本物のコケの展示、裏千家によるお茶席のブース、
コケグッズ販売(コケTシャツもあります!)なども例年通りあります。
ぜひ会場に早めに来ていただいて、ディープなコケの世界を満喫してくださいね。
ちなみに余談ですが、コケ好きの中ではいまや有名なブログ「そよ風のなかで Part2」の左木山祝一さんの講演会『コケを撮る コケを知る』と
朝一番で行われる「植物園のコケ観察会」に参加するというのが今回の私の最重要ミッション。
さらに!同じく京都で11/11(土)-12(日)に開催される「いきもにあ」の会場を今年こそは覗いてみたいと欲をかきまして、
(関西に住んでいるにもかかわらず)ついに京都市内のホテルを予約してしまいました。
というわけで11月は京都に1泊2日し、万全を期してこの二大イベントに臨みたいと思います。
【お知らせ】 コケ好きのためのコケカレンダー「苔暦」の2018年版も販売予定です!
「こんなカレンダー、欲しい人っているんだろうか…」と毎年思いっきりネガティブな気持ちから始めつつ、あれやこれやとかわいいコケ、美しいコケを眺めているうちに、
「いや、今年もきっと誰かが待ってくれているはず!」と自然とポジティブな気持ちになって、どうにか続いてきたこのカレンダー、
今回も例にもれずネガティブ自分とポジティブ自分に思いっきり揺さぶられながら、鋭意制作中です!
11/10(金)~の「苔・こけ・コケ展」の物販コーナーに並べさせていただくほか、
11月中旬頃からこのブログでも告知したいと思っています。もうしばらくお待ちくださいませ。
▲ツガゴケの群落。長い毛が伸びたユニークな帽が見られるのはこの時季ならでは。2018年版10月のカレンダーに使う予定です。お楽しみに!
【コケ情報】moss×kibidango『キビノダンゴゴケ 柄きびだんご』を「苔・こけ・コケ展2017」で限定販売!
先の記事でお伝えした「苔・こけ・コケ展2017」がいよいよ今週末に迫ってきた。
コケ好きのためのカレンダー「苔暦2018」も昨日印刷があがり、どうにか出展に間に合いそうでホッとしている。
さて、今年はなんと「苔暦」以外にも、普段から親しくしているコケ友さんたちとアイデアを出しあってこんなものも作ってしまった。
▲『キビノダンゴゴケ柄入り きびだんご』(プレーン味/15個入/税込1200円)
どうしてまたこういうものを作ってしまったかというと、
「もしもキビノダンゴゴケ柄の吉備団子があったらおもしろいよね」
という冗談半分の話を普段からコケ友さんたちとしていたのがきっかけ。
キビノダンゴゴケとは学名を「Sphaerocarpos donnellii」といい、苔類・ダンゴゴケ属の一種で、
これまで主に北米で生育が知られていたのだが、2009年に日本でも岡山県で初めて生育が確認された。
その形態的特徴と吉備団子が名産の岡山県が発見地ということから「キビノダンゴゴケ」という
なんともかわいらしい和名がついてしまったというコケなのである。
主な生育場所は田んぼの土上やあぜ道で、決して特別な環境条件がそろわないと生えないわけではなさそうなのだが、
なぜか最初に発見されてから8年ほどたったいまでも、日本国内では岡山県以外からは発見されていない。
和名の由来を本人たちは知ってか知らずかわからないが、私なんぞはつい、
「『吉備の団子』という名前を背負ったからには!」という、このコケの義理堅さを感じてしまう。
☆キビノダンゴゴケについての詳細はこちらへ→ ☆ ☆
そんなわけで、今回の吉備団子はそんなキビノダンゴゴケへの親しみを込めて、
キビノダンゴゴケの雌株・雄株をはじめ、パッケージもダンゴゴケ属のアンティーク画を使用するなど、
コケ友4人のコケ愛がみっちり詰まった商品となっている。
▲『英国の植物 第2版第8-9巻蘚類・苔類』(1842)より。
キビノダンゴゴケそのものではないが、ダンゴゴケ属の一種で雌株の植物体を描いたもの
▲本種の雌株・雄株ほか、全15個の団子一つひとつに違ったコケの写真やイラストをプリント。
箱の中には15種の絵柄の紹介とキビノダンゴゴケについて解説した特製しおりが入っている
製造は岡山県で吉備団子を作って160年の廣榮堂さん。
五味太郎さんのパッケージイラストでもおなじみの吉備団子の老舗メーカーだ。
味も品質も折り紙付き、子どもから大人まで楽しめるプレーン味。
あくまで食用インクを使ってコケの絵柄をプリントしているだけなので、本物のコケは入っていない。
どうぞ安心してお召し上がりいただきたい。
今回「こけ・苔・コケ展2017」の会場のみで100個ほどを限定販売し、会期の3日間は必ず毎日並べる予定なので、
「気になる!」「欲しい!」という奇特な方がいらっしゃったら、ぜひ早めの時間に会場にお越しいただければありがたいです。
-------------------
●おまけ
印刷会社から届いたばかりの『苔暦2018』。2018年の1月はヒナノハイゴケから始まります。
ブログでの販売も来週中にはスタートさせますので、しばしお待ちくださいませ。
【お知らせ】コケ好きのためのカレンダー「苔暦2018」ができました。 ※今日から販売スタートします!
▲今年も作りました。コケ好きのためのカレンダー「苔暦2018」。透かし紙の帯紙付き
よいよ霜月も後半戦。
昨日、近所の文房具店に入るとクリスマスカードと年賀状が並んでいるのを目にし、
いよいよそんな季節かとちょっとドキッとしました。
このブログを読んでくださっている皆さんもきっと、
年末年始に向けて少しずつ準備をされ始めているのではないでしょうか。
さて、そんなお忙しい中を分け入るようで恐縮ですが、
今年もコケ好きのためのコケカレンダー「苔暦」を作りました。
なんだかんだで今回で5回目のコケカレンダー。
去年あたりからはこちらが宣伝する前に「今年もコケカレンダー作ってる?」という質問を複数いただくようになり、
待ってくれている人がいるのって本当に励みになるなぁとしみじみしながら、今回も力を入れて制作しました。
このブログを見てくださっている方の中でも、ご興味のある方がいらっしゃったらお分けいたします。
※なくなり次第、終了します。
「苔暦2018」 <壁かけ用、1部:1400円+送料 ※送料についての詳細は下記をご参照>
今年の12か月はこちら!
▲仕様:210×148㎜(A5サイズ)/全4色カラー。祝祭日・振替休日の記載あり。吊り下げ用紐付き。
ジェントルホワイトフェイス121.5K使用で、ややざらっとした手触りでマットな質感です
ここ数年、テーマを決めて制作していますが、2018年版のテーマはすばり「Unique is beautiful!」。
うずくまって、ルーペでコケをのぞいてみたことがある人なら誰もが感じる、コケの個性的な形や、きらめくような美しさへの驚き、
さらに図鑑をめくればそのユニークな生き様を知って「こんなつつましい存在に、こんな巧みな処世術が!」とさらに感動する、あの感じ。
コケの形状のユニークさや生き様の面白さに、そのつど心震わせながら写真を撮っている一コケ好きの喜びが、
カレンダーを飾ってくれる方に少しでもおすそ分けできるような種類や写真をチョイスしてみました。
▲掲載種については和名・学名、そしてをその特徴や見どころをキャプションにまとめ、
さらに特徴的な胞子体を持つものや小さな種類についてはアップの写真を掲載
▲カレンダー上面に穴があいています。壁掛けカレンダーとしてどうぞ。
カレンダー代に加え、下記の通り別途送料がかかります。
それぞれ最安値の配送方法を選んでいますが、
ご希望の配送方法(宅急便など)がある場合はご注文の際にご相談ください。
【ご注文冊数による送料の違い】 ※カレンダーは1400円/冊です。
■1冊:送料140円(普通郵便)
■2~4冊:180円(スマートレター)
■5冊以上:送料無料 ←(一度にそんなにご購入くださるのは大変ありがたいので!)
購入希望の方は当ブログ左側のバーにある「プロフィール」の下、「メッセージを送る」にご連絡ください。
その際、下記の必要記入事項をご記載ください。
※iphone からこのブログを読まれている方だと「メッセージを送る」の欄が表示されないようです。
ご注文は、bird0707◆mail.goo.ne.jp (◆を@に変えてください)のメールアドレスに送ってくださいませ。
こちらからご注文の確認とお振込先についてのお返事を差し上げます。
----メッセージへの必要記入事項-------------------
1.お客さま情報
・お名前:
・カレンダーの送付先:〒
・電話番号:
・メールアドレス:
2.必要部数 部 送料 円 ★合計金額 円
------------------------------------------------
●金額
1部=1400円 (送料:1冊140円。2~4冊は180円、5冊以上は無料)
●代金
ご注文メールをいただいた方、各々に振込先をお知らせします。
振込手数料はお客様の御負担でお願いします(入金確認後の送付となります)。
●発送方法
PP袋で個包装の上、「普通郵便」または「ゆうメール」で発送します。
●ご注文期間:11月19日~1月いっぱい頃まで。
※勝手ながら12/14~12/24は自宅を不在にするため対応できません。お急ぎの方は12月初旬までにご注文・お振込みいただけると助かります。
※品切れ次第終了いたします。
※ご注文メールを頂いてから、基本3日以内にはにこちらから確認メールを差し上げます。
3日以上たっても確認メールが届かない場合には、御手数ですがご一報ください。
※Amazonや巷の通販のような敏速な対応はできませんが、できるだけ早めに対応・発送させていただきます。
ではでは、皆さまのお申込みをお待ちしております!
▲ご自分用としてはもちろん、コケが気になるあの人へのクリスマスプレゼントにもおすすめですヨ!
---------------
●おまけ
先にブログでお知らせした京都府立植物園での「苔・こけ・コケ展」、今年も盛会に終えることができました。
例年通り3000人を超える来場者があったとのこと。とくに最終日はすごい人出でした
コケ柄入り吉備団子、コケTシャツもおかげさまで多くの方にお手に取っていただくことができました。ありがとうございました。
いまさらながら地元で新たな出会い「コモチネジレゴケ」
電車で10分ほどの市街地のコケを見て回る機会があったのだが、
うれしかったのが、これ。
▲神社の境内にあるクスノキの幹のすきまにて
これは、センボンゴケ科ネジレゴケ属の「コモチネジレゴケ」。
葉から中肋が長く突出して透明尖となり、
茎頂部にたくさんの無性芽をつけるのが特徴で、
ひと目見たら、それとわかる蘚類の一種だ。
▲葉から長く飛び出た透明尖
▲ルーペで見なくとも葉の形と透明尖を見ればじゅうぶんそれとわかる
▲さらに肉眼同定のとどめはこれ。開いた葉の中心部には無性芽がいっぱい。この写真ではわかりづらいが、形は葉状だという
▲こちらの2株(写真右)は無性芽がとくに大盛り!
平凡社のコケ図鑑『日本の野生植物コケ』によると、
「市街地の街路樹の樹幹上に生育」とあるので、まさにどんぴしゃの環境だ。
▲見慣れると、他のコケとどことなく雰囲気が違うのがわかる
したたかな都会の猛者(モサ)ならぬ苔(モス)たちがひしめく
この〝クスノキタワーマンション〟の樹幹なかで、
生育場所は地上から高さ120~140㎝くらいの
ちょっと湿気のこもりそうな樹皮の隙間に集中していた。
これまでこの木にはヒナノハイゴケやサヤゴケなど、
アーバンモスとしておなじみのコケばかりだと思っていたけれど、
きみたちは、いったいいつからここに?
いままで全然気がつかなかった。
さらにインターネットでこのコケについての論文やレポートを読むと、
じつはこのコケ、ミカヅキゼニゴケと同じく外来種のコケで、
1970年代以降から日本で見られるようになったとのこと。
無性芽のみで繁殖し、胞子体をつけたところはまだ日本では確認されていないという。
生育分布は大阪や兵庫、岡山、広島などの瀬戸内海沿岸域、京都、
さらに山梨や大分などにも点在しているのだとか(あくまで過去の論文・レポートによるもので現在は不明)。
外来種と聞くと反射的に在来種への影響が気になってしまうが、
いまのところ在来のコケに大きな脅威になるほどの影響力はないらしい。
たしかにこのクスノキを見ても、樹幹の表皮にはおなじみのアーバンモスたちが圧倒的な生育面積を占めており、
コモチネジレゴケが生えているのは先にも書いた通り、幹の隙間の狭い空間のみ。
どちらかというと、ここしか空いていなかったから生えているというような印象だった。
▲気を付けていないとここもヒナノハイゴケ(写真左)に侵略されそう・・・
「コケ」と「旅行」が趣味の私にとって、北へ南へと各地を旅してそのエリアならではのコケと出会うことはいまや人生の大きな楽しみの一つだけど、
普段からよく通りがかっている身近な場所にも、時にこのように新たなコケとの出会いがあるというのもまた別格の嬉しさがある。
身の回りには、まだまだ自分が気づいていないコケとの出会いが待っている。
やはり身近な場所だからといって知った気になっていてはいけないなと
このコモチネジレゴケたちに教えてもらったような気がした。
▲神戸市内にて。生えていたのは都市部の神社の中のこんな場所でした(男性二人が観察中のクスノキです)。
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●追伸
このブログのトップにも書きましたが、このたびもおかげさまで、
コケカレンダー「苔暦2018」を多くの方にお求めいただきました。
「カレンダー、到着しました!」のメールを嬉しく拝読しつつ、
先月末からバタバタ続きで、お一人おひとりにお返事が書けず申し訳ありません。
あらためてこの場にてお礼申し上げます。
そして、そのようなわけでカレンダーは本当に残りあとわずかです。
気になっていらっしゃる方はどうか早めのお申し込みを!
加えて、12/14から従姉が住んでいるドイツへ行く予定がありまして、
12月下旬まで発送作業がいったんストップします。
お振込みが12/12以降の方は帰国後に発送させていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。
ちなみに、ドイツでは従姉がコケ好きのドイツ人を紹介してくれるとのこと(!!)。
どのような時間が過ごせるか、いまから楽しみで仕方ありません。
またこのブログでもレポートできたらと思います。
いよいよ今年も余白が少なくなり、寒さも本格的になってきました。
皆さまそれぞれにお忙しいと思いますが、どうか身体にお気をつけて、良いお年をお迎えください。
テラリウムの進化系!?「KOBE キノコ・コケ・テラリウム展」を見学(その1)
2018年が明けて、早いものでもう明日から立春。
今年はすっかり〝ブログ始め〟が遅れてしまった。
約10日間のドイツ旅行を終え、久々の長旅に疲れたのか年末年始はウイルス性胃腸炎で悶絶。
お節料理もあまり味わえず、なんだかなぁと思っていたところに、NHK大河ドラマ『西郷どん』がスタートしたのでとりあえず見る。
このドラマ、近年の大河ドラマには珍しく方言が多用され、台詞の中にやたらと「~もす」(~ます・~です)という薩摩弁が出てくる。
そのたびに脳内で「モス(moss)」と自動変換している自分がおり、ウイルス性胃腸炎は治っても
悲しいかな、こちらの病気はますます悪化しているなぁと自分に苦笑いの年初めなのであった。
でも前評判はいろいろ言われていたこのドラマ、いざ蓋を開けてみると
脚本も役者たちの演技も面白くて見応えがある。おすすめです。
さて、今年のコケ始めは撮影のため主に街中のコケを見て回ったりしたのだが(またおいおい告知します)、
屋内活動としては、先週の日曜日にちょっと変わったテラリウム展を見学しに行ってきた。
▲「KOBE キノコ・コケ・テラリウム展」1月27・28日開催@花と緑のまち推進センター(神戸市)
会場は神戸市・元町駅から徒歩15~20分ほど北上した所にある「花と緑のまち推進センター」(三宮駅近くからバスも出ている)。
日曜日のお昼過ぎに行ったのだが、こじんまりとした展示室に入った途端、目に飛び込んできたのはこの人の数!
今回、約50個のテラリウムが展示されていたそうだが、所狭しと並ぶテラリウム以上に、
見に来ている人の方が多いのではないかというくらいにぎわっていた。
▲展示室の壁に面してテラリウムが展示され、センターのテーブルには、両日にわたって行われたテラリウム作り講習会の道具一式の準備が。
このあと午後の部の講座を受けにきた受講者たちでさらに展示室はぎゅうぎゅうになっていた
今回のテラリウム展は、「きのこリウム」(樋口和智さん)と「Mosslight-LED」(内野敦明さん)による、キノコとコケが主役のテラリウムの展示であった。
コケを使ったテラリウムはここ数年でどんどん人気が増しているのは、大方のコケ好きがご存じと思うが、
その中でも内野さんの「Mosslight-LED」のテラリウムは、ガラスポットの上にLED照明が装着されているのが大きな特徴である。
照明関係のお仕事を長く続けてこられ、オカモス関西のコケ観察会では常に照度計を持ち歩かれてコケ周りの光を計測している内野さん。
「実際に計測してみると、コケは人間がイメージしている以上に、生育には強い光を必要としているんですよ」という。
それで、コケに望ましい光をあてて生育できるLED照明付き容器にいきついたのだそうだ。
▲たしかに、実際に下から容器をのぞいてみると、長くは見つめていられないほどまぶしい
しかもLED照明は前面に熱が出ないので、ガラス瓶の中でコケが蒸れたり、焼けたりという心配もほとんどないという。
普段は〝コケは育てるよりフィールド観察派〟の私も、じつは自宅にコケのテラリウムが何体かある。
育て始めて数年経つが、「家の中のどこに置けばコケの生育ために正しいのか」が正直なところいまだわからない。
おそらくこれは徒長しているんだろうなぁ・・・と思いつつ、コケがなんとか緑色を保っているのをよいことに、
積極的な改革は行わず、一日を通して陽射しの変化が少ない北側の部屋で経過観察し、今日に至っているというありさまだ。
一方、それに引きかえ内野さんのテラリウムのコケはなんとイキイキしていること!
色も大きさも野外で見る同種のコケと遜色ないくらい、どの子もとても健康的。
眺めていると、思わずため息がもれる美しさだ。
元気にコケが長生きするため、容器内に一緒に入れた岩や古木も数年でコケが覆い尽くし、
気付けばがらっと景観が変わっていたりするのもまた楽しいのだそう。
他の陸上植物と違って根を持たず、土がなくても光と水があれば育つことができるというコケ。
現行のテラリウムの多くは、容器で水(湿度)の部分はカバーできているが、
光については、ただ光を透過するガラス製容器であるということだけでは、
コケはまだ心からは満たされていないのかもしれない。
注)いや、じつは私のようなズボラな性格の人がマイナーで、ほとんどのテラリウム愛好家の皆さんは、
もっとコケのために光の調節に日々心を配られているのかもしれませんが…。
いつも自分の身近で緑を見ていたい、暮らしに緑をとり込みたいと考えるのは、世の常。
そういった点では、LED照明付きのテラリウムは、住環境を選ばす、さらには持ち主の性格も選ばず(?)、
持続的に健康なコケと暮らせる新しい方法の一つなのかもしれない。
ちなみに唯一気になる電気代だが、LED照明の場合、1日8時間(コケの生育に必要な目安時間)の点灯で1年で540円ほどだそうだ。
長文になってしまったので続きは次回に。
次は、もう一つのメイン展示だった「キノコリウム」についてです。
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<私信> 昨年12/19にブログへメッセージをくださった、とき様へ
メッセージをくださり、ありがとうございます。嬉しかったです。
コケがお好きとのこと、お若いうちからコケと出会えることができたなんて、とても羨ましいです。
拙著も読んでくださりありがとうございます。またどちらかでお会いできる日を楽しみにしていますね。
※とき様のメールアドレスが見当たらなかったので、こちらに返信させていただきました。ご容赦を!m(__)m
テラリウムの進化系!?「KOBE キノコ・コケ・テラリウム展」を見学(その2)
まずはお知らせです。
今週2月7日(水)21時30分~から放送の
稲垣吾郎さんがパーソナリティを務める
ラジオ番組『編集長 稲垣吾郎』(文化放送)に出演させていただきます。
そう、あの稲垣吾郎さんです。
たびたびこのブログでも言っていますが、幼少の頃からテレビっ子でドラマやバラエティが大好きなワタクシ、
まさか自分の人生で稲垣吾郎さんとおしゃべりできる機会が巡ってくるなんて思いもかけないことで、依頼をいただいた時はたまげました。
コケの魅力や、おすすめコケスポットのほか、稲垣さんのコケにまつわる思い出話なども出てきますので、ぜひお聴き逃しなく!
※地域によって放送日時が違うようです。また都道府県によって放送されていないエリアもありますので、
詳しくは同番組のHPをご確認くださいませ。radikoでも聴けます。
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では、前回の記事の続き、「KOBE キノコ・コケ・テラリウム展」のもう一つの主役「きのこリウム」のレポートをば。
今回のテラリウム展が展示会デビューだったという「きのこリウム」作家の樋口和智さんは、
もともとはアクアリウムが趣味で、キノコが主役の「きのこリウム」は3年ほど前から始められたのだという。
これらのテラリウム、もちろん野外に生えているキノコを植え込んでいるわけではない。
巷で販売されている食用キノコ栽培キットの菌床をガラス容器の中に植え込み、
温度・湿度を徹底管理し、最終的にキノコを生やして完成させている。
樋口さんがキノコをテラリウムで育てて鑑賞しようと思いついた当時、
同じようなことをしている人が他におらず、ここまでの道のりはほとんど独学。
失敗と挑戦を繰り返しながら、現在のようなスタイルに行きついた。
▲樋口さんが育てられたエノキ。コケはシッポゴケの仲間かな?!
「きのこリウム」の面白さは難しさと紙一重だ。
野外でキノコを観察したことがある人はご存じかと思うが、キノコというのは往々にして神出鬼没。
発生時期がわかりにくく、しかも寿命も短くて、数日ほどで枯れてしまうものも多い(キノコの種類にもよりますが)。
今回、会期の2日間に合わせて、キノコがちょうど傘が開いた状態のものを展示できるよう樋口さんは半年以上前から準備を始めたそうで、
ご自宅には選抜メンバーに選ばれなかった補欠組のテラリウムが展示数と同じくらいあり、
さらにキノコが1つも出てこないような万が一の事態に備えて、4Kモニターで映像を流す準備もされたのだそうだ。
▲万一のために備えて作ったという、これまでの作品をまとめたスライドショー
▲一つの水槽にキノコ、コケ、シダが競演。小さな隠花帝国がここに!
キノコを上手に生やすための設備、それにかけてきた膨大な時間、聞けば聞くほど
樋口さん、かなりのご苦労をされてきたご様子。思わず、それは大変でしたねぇと労ったが
「キノコはなかなか思うようにいかないです。でも、だからこそ育て甲斐があるし、
小さなキノコが出てきて大きくなっていく姿を見る時はものすごく嬉しいし、興奮します。
きっと鑑賞している人よりも、僕の方が楽しんでいますよ」
と笑顔で返してくださったのが印象的だった。
▲ナメコ。スーパーのナメコに慣れ親しんでいる者としては驚きのビッグサイズ
▲こちらはヌメリスギタケ。個人的にはこれまで売られている所を見たことがないが、食用として栽培・市販されているキノコの一種だそうだ
見ているだけで、なんだろうこの心にじわじわとくる感じ。
よくもまぁこれだけ見事なキノコを育てられたものだという感心もあるのだが、それだけではない。
常緑のコケと違い、キノコというのは姿を現したと思ったらぐんぐん成長し、
柄が伸び、傘が開いて、胞子を撒ききったら、今度は途端に朽ちてしまう。
そういうはかない代物であるということを、私たちはなんとなくだが知っている。
現に同展示を主催された花と緑のまち推進センター・センター長のHさんによると、
会期1日目にはまだ傘をすぼめていたキノコが、2日目に見てみるとぐっと大きく傘が開いており、
作品そのものの雰囲気が全然違って驚いたとのこと。
万物は常に流動的で、生じたら滅する。
短いサイクルでキノコの発生から消滅までを作品として見せてくれる「きのこリウム」は私たちが普段は意識していない、
でもすべての生きものが共通して抱えているこの〝宿命〟をふと思い出させてくれるから、心にグッとくるのかもしれない。
見ているだけでそう感じるのだから、きっとゼロから育てている樋口さんの感動はひとしおだろう。
さて、最後にもう一つ。
今回、会期中に午前・午後2回にわたって特別企画としてコケテラリウムの講習会が行われた。
両日ともに事前予約でいっぱい、キャンセル待ちが出るほどの人気ぶりだったそうだ。
2日目に私が展示室を訪れた時に講師を担当されていたのは大阪にある「コケリウム」の岡村さんだった。
▲写真右上、センター長Hさんに紹介されているのが岡村さん
岡村さんはオカモス関西支部のメンバーでもあり、毎月開催されるコケサロンでもよく顔を合わせるメンバーのお一人だ。
※コケサロン:大阪にて月1で平日夜にコケに取りつかれたマジメな関西人が情報交換や同定のために集まる会のこと
私の知り合いのコケテラリウム作家さんは研究熱心な人が多いが岡村さんも同じくで、
先月のコケサロンでは、テラリウム作りでよく廃棄しがちな「仮根」を捨てずにきちんと育てれば、
またテラリウムに使えるレベルの植物体に再生するという実験結果をタマゴケを例にお話しくださった。
「だから仮根は捨てちゃダメです!」とのこと。
※仮根:コケが生育基物にしがみつくための根のようなもの。
他の植物のように栄養を吸い上げる機能はほとんどないといわれている。
コケのテラリウムは、年々人気が高まっているのを園芸派じゃない私でさえもこういったイベントを訪れるたびに感じているが、
じつは原材料を調達する目的で一部の心無い業者らによる「乱獲」が横行していることもたびたび見聞きする。
そのたびにこれまで胸がきゅっと締め付けられるような思いをしてきたが、岡村さんのような販売者の存在には本当に心が救われる。
すべての自然が無限にあるわけではなく有限であり、もちろんコケもしかり。
そんなことをいまさら私が言わなくとも園芸でコケを扱っているプロの方はとうに感じておられるだろうが、
「コケは道端や庭のどこにでも生えている」というイメージもあるからか、意外と購買者側はそこまで想像していなかったりする。
有限だからこそ、一つ一つのテラリウムと長く付き合えるように、
生命のはかなさや尊さをより深く感じられるように、
ロスを減らし循環させて増やしていくことにも注力して・・・
最後にちょっとまじめな話になってしまったが、
今回のテラリウム展ではそのような新たな光が見えたような気がしたのだった。
『知りたい 会いたい 特徴がよくわかるコケ図鑑』が3刷目になりました&コケ情報(雑誌にコケ特集あり)
▲獅子ヶ鼻湿原にて(2017.8月 秋田県)
残暑お見舞い申し上げます。
関東は不安定なお天気が続いているそうですが、関西はあいかわらず暑いです。
お盆休みは山形で過ごしたのですが、あちらは朝晩がとても涼しくて、久々に快適に眠ることができました。
さて、8月18日付で『知りたい 会いたい 特徴がよくわかるコケ図鑑』(家の光協会)がおかげさまで3刷目に入りました。
一時、書店やAmazonで品切れ状態でご迷惑をおかけしましたが、在庫も補充されているようなので、また見かけたらお手にとっていただければ幸いです。
なお、3刷目からは何種類かのコケの線図を改定、蘚類・苔類のインデックスのズレも改善されています。
(すでに1刷目、2刷目をお持ちの方は、お持ちのものがボロボロになったら3刷目をぜひ!)
▲文教堂二子玉川店さん(東京)でのディスプレイ。筆者の「タマゴケのおすすめポイント」を書いた手書きPOPとともに
▲農業書センターさん(東京)でのディスプレイ。
こちらもかわいいコケキャラクターとともに本物のコケを一緒に展示してくださっています
ちなみに本書でコケの生態により興味を持たれた方は、
本書の監修をしてくださった秋山弘之さん(兵庫県立人と自然の博物館)の『苔の話』(中央公論新社)がおすすめです。
通勤・通学中にも読みやすい新書サイズ。この夏の1冊にぜひ。
以上、ちょっと宣伝でした。 m(__)m
【コケ情報】
現在発売中の雑誌『岳人』(9月号)と『山野草とミニ盆栽』(夏号)はもうご覧になりましたか?
『岳人』にはコケ研究者・木村全邦さん(森と水の源流館)のインタビュー記事「コケの生態学」が4ページで掲載されています。
コケの生態の基本を抑えつつ、「食べてみました」「コケを愛でる日本人の美意識」「大阪・ミナミの水掛不動の謎」など初心者が楽しんで読める話題が満載です。
ちなみに木村さん、『こけの謎-ゲッチョ先生、コケを食う-』(盛口満著、どうぶつ舎)では、
「コケ屋のキムラさん」として登場している、あの木村さんです。
また、『山野草とミニ盆栽』では特集1「苔を楽しむ」として16ページが組まれ、北八ヶ岳のグラビアページに始まり、
岡山コケの会関西支部世話人の道盛正樹さんや、関西では知る人ぞ知るコケ育ての達人・田上順一さん、
「コケのインテリア コケリウム」主宰の岡村真史さんらが執筆・登場。
「新感覚のBONSAIたち」と題した特集2では6ページにわたり盆栽家・園芸家の方々のインタビュー記事が掲載されています。
いずれもカラーページでとても読みやすいですよ。
●おまけ
この夏に訪れた和歌山県と秋田県でコケを見に山を歩いていたところ、腐生植物なるものと遭遇。
これまで腐生植物といえばギンリョウソウを5年ほど前に1度見たきりだったので、最初はこれらがいったい何かわからず。
とくに初めて見たヒナノシャクジョウは「これはもしや新種のキノコかも?!」と発見時はちょっと興奮してしまいました。
▲ヒナノシャクジョウ(2017.8月 和歌山県)
▲おそらくギンリョウソウの古株(2017.8月 秋田県)
(2017.8.23追記)↑ギンリョウソウではいようです。「タシロラン」や「シャクジョウソウ」の可能性ありとのご指摘をいただきました。失礼しました!
南方熊楠をめぐる旅 (その1)
【お知らせ】
9月11日、2014年発行の『コケに誘われコケ入門』(文一総合出版)の新訂版が出ました。
コケの基本をしっかり押さえているのは前作そのままに、コケ図鑑ページが50種からなんと100種に大幅増量。
表紙、グラビアページ、顕微鏡写真のページが一新していたり、コケを使った遊びの紹介まであったりと、
すでに前作を持っている人にも「これはやっぱり買わねばなるまい!」と思わせる心憎い内容になっています。
文一総合出版のホームページには「立ち読み」ページも載っていますので、ご興味がある人はぜひ。
▲『生きもの好きの自然ガイド このは7 新訂版 コケに誘われコケ入門』定価1,728円(本体1,600円+8%税)
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さて、春に本作りも一段落して、時間の余裕が少し出てきた今日この頃。
この夏は、長らく〝積ん読〟になっていた本や、人から勧められた本を読んだり、
気になっていながらずっと行けていなかった場所を訪ねてみたりしていた。
この春までの「とにかくゴールに向かってできる限りを尽くして突き進む」という本制作の時間の使い方とはまた違った、
「どこに行くかは自分でもよくわからないけど、なんとなくピンとくる方に進んでみる」みたいなことを少し意識してやっていた夏だった。
(私だけかもしれないが、夏はそういう「どこ行くあてもない」ことをするのにぴったりだと思う)。
その一つとして、8月初旬に出かけたのが和歌山県の海沿いの街。
コケやキノコ関係の本を読んでいてたびたび名前を見かけては、
その存在がずっと気になっていた「南方熊楠」の足跡をたどる旅へ出かけた。
南方熊楠(みなかた くまぐす)とは、明治から昭和までを生きた和歌山県出身の学者(74歳で没)で、
私が普段よく話をするコケ屋界隈、生き物屋界隈の人々の間では周知の人物だ。
しかし一方で、幼なじみ(基本的にみんな文系)や分野外の知人には、「誰それ?」と名前さえ知らない人も多い。
熊楠を知っている人ならば誰もが思うように、この人のことをひと言で表すのはとても難しい。
粘菌やキノコなど隠花植物を日本で先駆けて追いかけた生物学者であり、
柳田国男とも交流が深かった民俗学者であり、夢や神話、哲学、性科学などにも精通していたという、人呼んで「知の巨人」。
20~30代の十数年間はアメリカ、キューバ、イギリスへ海外留学し、キューバでは新種の地衣類を発見。
十数か国語を理解したといわれ、イギリスの科学雑誌『Nature』に投稿・掲載された論文は50以上、
その投稿数の記録はいまだ破られていない(らしい)。
40代の頃は、「エコロジー(生態系)」という言葉の概念を日本でいち早く理解して使い、
日本各地の鎮守の森を国の伐採計画から守るために、地域の神社を統合する「合祀令(ごうしれい)」に猛反対した。
一時はそのせいで投獄されるも、結果的には世論を動かして法律の廃止に至らせる。
60代では、学者としての功績が認められ、キャラメル箱に入れた標本を携えて
和歌山を訪れた昭和天皇に、粘菌についてご進講(これが一番有名な話かも)。
国内外でそれだけの偉業を成し遂げながらも、どこの組織にも属さない生涯フリーの研究者で、
採集した動植物を公に発表することにはそこまで興味がなく、たとえば植物は植物分類学者の牧野富太郎や
岡村周諦(日本の蘚苔類学の草分け的研究者)に送って、代わりに新種として報告してもらっていたりした。
家族や友人、弟子たちのサポートだけを頼りに、森羅万象の成り立ちを追いかけ、
そのすべてを日記をつけるようにひたすら記録し続けた在野の学者。
これだけのトピックを並べてもまだその半分は取りこぼしているくらい、
とにかく熊楠がその一生でやってきたことは質量ともに常人のそれとは桁違いなのである。
さらに、無類の大酒飲みかつ癇癪持ちで、一度怒ると手が付けられなくなって暴力事件を起こすこともしばしば。
40代までは女性と交わったことがなく男色で、植物採集のために入った那智の森では霊的なものとも交信していたとか、
特技は自分の意思で自由自在に嘔吐することだったとか、その人となりについても、信じがたいほどにエキセントリックなエピソードばかり・・・。
これまで南方熊楠についての読み物を何冊か手に取ってみたが、
「本当にそんな人いたの?」「後世の人が勝手に話を膨らませてるんじゃなくて?!」
と知れば知るほど、なんだか疑念が湧くわばかりで、その姿はますますぼんやりとしてしまうのだった。
そのようにして何年も過ぎゆくうちに、この夏。
2017年はちょうど南方熊楠の生誕150周年という情報をネットか何かで知った。
ゆかりの地では熊楠にちなんだイベントが多いという。
よし。どんな人なのか、よい機会だから自分自身で行って確かめてみよう。
結局、先人たちと同じようにその足跡をたどることしかできないが、
現地に行ったからこそ感じられることがきっとあるはず。
そんなわけで8月最初の金曜日の朝、熊楠が長く住んでいた和歌山県の紀伊田辺に向かうべく「特急くろしお」に飛び乗った。
▲車中から眺めた太平洋
紀伊田辺の駅から徒歩10分ほど、住宅街の中に突如として現れるのが「南方熊楠顕彰館」だ。
ここでは南方熊楠の蔵書や資料を恒久的に保存し、広く一般に公開している。
▲南方熊楠顕彰館の入口
この日は特急くろしおで移動中、紀伊半島を南下し始めたあたりから雨がざあざあ降りで、
紀伊田辺の駅に降り立った時にちょうど雨は上がったものの、肌はどこもかしこもじっとりとまとわりつくような湿気に包まれていた。
とはいえ、そんなに悪い心地はせず、むしろ普段、瀬戸内海式気候に慣れ親しんでいる者としては、
太平洋につき出た紀伊半島を想像しながら「これぞ多雨多湿な太平洋岸式気候!」とひそかにわくわくしていた。
南方熊楠がこの地でこのような空気に包まれながら研究の日々を送っていたのだと思うと、さらに気持ちが高ぶる。
高湿度の屋外とは対照的に館内はクーラーがよくきいており、
平日の昼間ということもあってほとんど人けもなかった。
▲館内。1階は主に熊楠の偉業別にその詳細をまとめたパネルが展示がされていた
▲2階。熊楠が存命中の新聞記事をはじめ、南方熊楠にまつわるさまざまな資料を手に取って読むことができる
▲熊楠の日記(レプリカ)と晩年の写真
▲右は植物採集用の野冊。左は植物採集に出かける際の一コマを収めた写真だが、
じつは「こんな格好で採集に行くんですよ」というのを見せるための〝やらせ〟写真なのだという
▲昭和天皇にご進講の際に献上したキャラメル箱(レプリカ)。この大きな箱の中にいくつも標本を収めていた。
キャプションには「桐の箱も用意していたが、手袋をはめて桐の箱のふたを開けるのは困難なので、キャラメル箱で献上したと言われている」とあった
1階、2階と館内をゆっくりと一周したあと、もう一度1階に戻り、
一番奥の展示室で開催中だった企画展「標本から読み解く南方熊楠」へ。
▲企画展のポスター。展示担当は、土永知子(和歌山県立田辺高等学校教諭) 、土永浩史(和歌山県立神島高等学校教諭)、
萩原 博光(国立科学博物館名誉研究員)、大和茂之(京都大学瀬戸臨海実験所助教)による(敬称略・あいうえお順)
この企画展の展示物はすべて撮影禁止だったのでここには載せられないが、展示内容がとてもよかった。
熊楠が採集した海産生物や植物の標本、彼が記した観察記録、図譜などの実物が拝めたことはもちろん、
それらにまつわるエピソードが本展の展示を担当された熊楠研究者たちによって丁寧に解説されていた。
やっぱり肉眼で実物を見るということは大切で、熊楠の屈強そうな見た目とは裏腹に、スマートで流れるようにさらさらと書かれた標本袋の筆記体、
茎葉の長いものなどはところどこを几帳面にテープでとめながら、丁寧に押し花状にされた高等植物やシダ類の標本、
ネットや本で見ていたよりもずっと淡く優しい筆致のキノコの図譜、そしてそれらを眺めながら添えられた解説文を読んでいくと、
これまで私の中の熊楠像のほとんどを占めていた「奇人」とはまた違った彼へのイメージが浮かび上がってきたのだった。
たとえば、それはどんなふうかというと、成果が出ようが出まいが決して手を止めることなく地道にこつこつと採集活動・標本整理を続けている姿や、
人よりも頭何個分も抜きん出ていながらも、じつはとても負けず嫌いで他人のこともちょいちょい気になり、悔しい時は大人げないほど正直に悔しがる姿、
とはいえ決してメゲたり恨んだりすることなく、それをバネにしてまた研究に打ち込もうとする姿など。
このような姿が自然と頭に浮かんできて初めて私は熊楠に親近感が持てたような気がした。
もちろんこれは単に想像にすぎないし、もし事実であっても、このようなことはすでにどこかの本で語り尽くされているのかもしれない。
ただ、実物を見てそう感じた、ということが今回の私の旅ではとても重要だったと思う。
ちなみに撮影禁止ということから、解説文で気になったところはすべてメモを取っていたので、
気付いたら1時間以上もさほど大きくない展示室に一人でこもっていた。
きっと顕彰館スタッフの人からしたら、なかなか企画展から出てこないアヤシイ人だったかもしれない(すみません…)。
ここまでずいぶん長々と書いてきたが、コケ関連でメモしたことをせっかくなのでこのブログにも記しておきたい。
<気になったエピソードのメモ(主にコケ関連)>
※企画展の解説文から私個人が勝手に要約したメモ書きなので、正確でない部分があるかもしれないことをご了承ください。
・クマノチョウジゴケ
唯一、南方熊楠の名前が残されている蘚類。学名は「Buxbaumia minakatae」。
道端でつまずいた倒木を後ろの人のために取り除こうとした時に発見。最初はキノコの仲間と思って採集したようだ。
英国産のウチワチョウジゴケとよく似ていると思ったが、大きさや生育場所の違いから別種と推測。
同郷出身のコケの研究者・岡村周諦に送って確認してもらい、新種として発表してもらう。
葉や茎が退化したこのユニークなコケが見つけられたのも、熊楠が普段から菌類や変形菌に興味を持ち、
その類への観察眼が鋭かったからだろうとのこと。
・イソベノオバナゴケ(現:ホウライオバナゴケ/シッポゴケ科)
塩性蘚類で、1911年『植物学雑誌』に岡村周諦が国内で初めて本種を発表。これも採集したのは熊楠だった。
現在の白浜町(和歌山県)にあたる西牟患郡湯崎の海岸で採集。
それまで海岸に生育するコケは国外で数種が知られていたが日本では記録がなかった。
しかし、熊楠は子どもの時からすでにこのコケの存在を知っていたようだ。
ただ、後の1970年代にこのコケのタイプ標本を水谷正美博士(服部植物研究所)が詳細に調べたところ、
他の蘚類と比べて特段に塩分が多く含まれている可能性は低いとしている。
※『日本の野生植物 コケ』(平凡社)でも「ホウライオバナゴケ」を引いてみたが〝塩性〟の記述はなく、生育場所も「地上や土に覆われた岩上」とだけある。
・隠花植物への興味
留学先のアメリカのアナーバーの農学校で、植物・菌類のアマチュア学者ウィリアム・カルキンスと知り合ったことが、大きく影響している。
高等植物の標本・スケッチなどに一応のめどがつくと、熊楠は隠花植物も同様の手法で採集・整理を行っていくようになる。
なお同時期、高等植物についてはすでに牧野富太郎などによって美しいボタニカルアートが描かれ、図鑑として出版されつつあった。
それを知った熊楠は、まだ図鑑もできていない菌類や藻類により時間と労力をかけたいと思っていたという。
・ギアレクタ・クパーナ
熊楠自慢の地衣類。1891年(明治24年)、熊楠が24歳の時にキューバで採集し、
研究の師であったW・カルキンスを通じて植物学者のニイランデル(仏人)が新種として発表。命名もニイランデルが行った。
本種はサラゴケ科サラゴケ属の痂状地衣で、石灰岩性の岩上を好む。熊楠はこういった固着性地衣類にも興味を示し、
岩石を割るためのハンマーやタガネなどを用意し、本格的な採集を心がけていたようだ。
・熊楠の蘚苔類の採集標本点数
熊楠が海外留学を終えて帰国したのは1900年。33歳の時だった。
そこからコケや地衣類の採集が始まり、34歳で勝浦、35歳で那智(ともに和歌山県)へ移ってからは、どんどん採集点数が増えていった。
39歳で結婚して田辺に移り、42歳の頃がもっとも蘚苔類の採集が多く、標本の数は1年で200点を超えた(もちろん他の動植物の採集もしつつ)。
ちなみに地衣類の採集数のピークは1902年、熊楠35歳の頃。那智に滞在中、1年に約300点弱を集めた。
以降、採集記録がまったくない年もあるが、40代以降も蘚苔類の採集活動は続き、最後の記録は1935年、熊楠が68歳の時である(おそらく数点のみ)。
なお、高等植物の採集は、熊楠が74歳で没した1941年まで行われていた記録が残っている。
▲顕彰館のエントランス近くに展示されていたハンマーなど。これで岩場の地衣類を採集していたのかも
最後に、常設展示で忘れられないのが熊楠が息子・熊弥(くまや)のために手に入れたというこの顕微鏡だ。
この時代の顕微鏡がいかに貴重か。熊楠は40代で息子と娘をもうけているが、とりわけ息子には期待をかけ、かわいがっていたようだ。
しかし熊弥は10代の後半で突如、精神を病んでしまう。
発病の原因は不明だが「熊楠の息子」であることが精神的な重荷となったともいわれる。
熊楠は大きなショックを受けつつ、熊弥が自宅療養中は研究活動もしながら看護もし、熊弥の様子を克明に記録した。
自分が死ぬ間際まで熊弥のことを心配していたという。
しかし結局、熊弥は熊楠亡き後も病状が全快することはなく、52歳で没している。
この顕微鏡は熊弥が何歳くらいの時に購入したものなのか、展示の中ではとくにその解説はなかった。
発病後の熊弥は、発作が起こると感情が抑えられず、時に熊楠の大切な標本を投げ散らかしたり、図譜を破ったりもしたそうだ。
果たして、親子にこの顕微鏡を一緒にのぞいてコケや粘菌の世界を楽しむ穏やかな時間が少しでもあったのだろうか。