▲ヤノウエノアカゴケ(2015年5月兵庫県)
今月初旬、兵庫県立 人と自然の博物館主催のコケ観察会に参加した。
久々に春のコケたちを満喫し、さらにこれまた久々にお会いしたコケ友さん、コケ諸先輩方とのコケトークも楽しかった。
ちょっと遅くなってしまったけどその時のレポートをば。
今回の観察地は兵庫県の南東部、駅の目の前すぐにある住宅地と工場地帯から少し離れたら、
川が流れ、田んぼや雑木林が一帯に広がるのんびりとしたロケーション。
講師のAさん(『コケはともだち』でもお世話になった、かのAさんです!)のガイドで、
道端(主にコンクリート)や田畑の脇の水路、そして林内のコケなどを中心に観察した。
じつはこのコース、4年ほど前にもAさんの案内でコケ観察をしたことがあるのだが、
やはりガイドしていただくと観察する種類が多いので、
たとえ前に同じコケを見ていたとしても必ず新たな発見がある。
また、この4年の間にこちらのコケ目(コケを見る目)も
それこそコケの歩みとはいえ、少なからずアップしているというのもあるのだろう。
同じコケにも前回にはない新たな着眼点で眺めることができ、
さらにそんな自分自身に気づくこともまた楽し♪てな具合で、
同じコースでも、新鮮な気持ちでコケを見ることができた。
▲道端のエゾスナゴケ。都会のどまん中にはめったにいないが、地方の道端や駐車場などのコンクリート上では時々見かけます
▲田畑脇の水路にいたコツクシサワゴケ。タマゴケと同じタマゴケ科、タマちゃんの親戚筋というところか
▲ウキゴケ(下)とホソバミズゼニゴケ(上)。同じく水路にて。
前回参加した観察会ではウキゴケは少なかったと記憶。嬉しいことにここ数年で勢力拡大した模様
▲参加者のおひとりがカエルを見つけました
▲以前から図鑑で見てずっと気になっていたヘラハネジレゴケとついにご対面!
アップにすると何とも個性的な形だ。和名のとおりヘラのような形の葉、そして葉先から伸びた白いおひげは葉の中肋だ
▲ヘラハネジレゴケを見つけた場所。見つけたのはまったくの偶然で、本当は違うコケをつまみとるつもりだったのだが、
つまんでみたらヘラハネジレゴケだったという・・・
▲よくよくルーペでのぞいたところ、他のコケに埋もれるように生えている。私のコケ目ではまた出会うのは難しいかもなぁ(^^;)
▲こちらは地衣類。ダイダイゴケの一種。Aさんに「水をかけると変化しますよ」と言われ霧吹きで水をかけてみる
▲するとくっきりオレンジ色だったのが、鈍い緑色へと変化!
これは表面にある菌類が水を含んで透明になり、下の藻類の緑色が浮き出てきているからとか
▲道中ではコケや地衣類以外にも目についた植物を観察。これはウマノスズクサの花。
花をつけているのはあまり見かけないとのことで、参加者たちのあいだで盛り上がった
この日だけで10~20種類ほどのコケを見たのだが、
なかでも自分が特筆しておきたいコケは「ヤノウエノアカゴケ」である。
このコケ、街中の道の隅っこや公園の土上などにわりと大きな群落を作り、
「アカゴケ」の名のとおり、胞子体の柄が真っ赤なので、とても目に付きやすいコケである。
しかし、いかんせんこの赤い柄ばかりが目立つため、「あぁ、あれはヤノウエノアカゴケだろうな」と
柄を見ただけでなんとなく知った気になってしまっていて、じっくりと向き合ったことがなかった。
よくよく振り返れば、柄が赤いこと以外、自分はこのコケについてなにも知らない。
また、他にも胞子体が赤い柄のコケがあるが、それらとどう区別するのかもわからない。大いに油断していた。
そんなわけで今回、Aさんのレクチャーで改めてヤノウエノアカゴケを
じっくり見る機会を得られたことは、とても大きな収穫だった。
▲コンクリート上に群生するヤノウエノアカゴケ
まず、知らなかったのがヤノウエノアカゴケが胞子を飛ばすのが春だということ。
春といえば、前回の記事で書いたタマゴケのタマちゃん、そして街中ではコンクリートやブロック塀にハリガネゴケの仲間たちが
ツヤツヤとした若い緑色をした(サク)をたわわにつけるのが、代表的なコケの風物詩であろう。
もうここ何年も自分はそちらに気を取られまくっており、ヤノウエノアカゴケはまったくのノーマークであった。
また、コケ友たちと話していても「春はヤノウエノアカゴケが見ごろだよね~」なんて話はいままで出たこともない。
それはなぜなのか。
ひとつ考えられるとしたら・・・
このとおり、どうにもこうにも(サク)が地味!
だからではないだろうか(^^;)
ヤノウエノアカゴケの(サク)をルーペで見てみると、
表面はしわしわ、しかも乾燥した状態だと葉茎も縮れて、
なんだかもう枯れかけている感が否めない。
しかしAさんのお話によると、このしわしわの時にヤノウエノアカゴケは胞子を飛ばしていて、
この皺のようなスジ(上の写真ではちょっとわかりにくいですが・・・)が、
(サク)に8本入っていることがヤノウエノアカゴケを他の種類のコケと見分ける大きな特徴なのだという。
ためしに群落を指先でなでてみると、シワシワの(サク)から胞子が飛ぶこと、飛ぶこと!
いままですっかりノーマークだったヤノウエノアカゴケ、
しかし(サク)に刻まれた皺は実りの証。
なにごとも見た目で判断するというのは軽率というもの。
ヤノウエノアカゴケよ、軽く見ていてごめんなさい。
次の春も、みなさんが渋い姿で満開になるのを楽しみに待っていますヨ。
◆今日のコケ絵日記(久々に描いてみました。自分の中のまとめとして)