さて、のびのびになっておりました「タマゴケ クロニクル」の最終章。
待っていてくれた人がいらっしゃるか否かはわかりませんが、遅くなってしまいすみませんでした。
春先のタマゴケ「タマちゃん」を待ちわびるようになって気づいたのは、
周囲のコケ友さん、またコケ好きの方の話に耳を傾けていると、やはり私と同じように
タマゴケが胞子体をつけるのを心待ちにしている人がとても多いということなのだった。
春にコケ好きが集まると、どんな場所でタマちゃんと出会ったか、どんな群落だったか、
いかにかわいかったかと、タマちゃん談義に花が咲く(いや「胞子が咲く」か!?)。
コケ好きじゃない人にはにわかに信じられないかもしれないが、
コケ好き同士でタマゴケの話をし始めたらコーヒー1、2杯の時間はじゅうぶんに間が持つ。
それほどにタマゴケのあの色、形、たたずまいは、コケ好きの心をくすぐる。
タマゴケはもはやコケ界のアイドル的存在なのだ。
そしてここ数年、私はアイドル・タマちゃんを追っかけて西へ東へ。
次第にどんな場所に行けばタマちゃんに会えるのか図鑑を見ずともコツがつかめてきた。
▲三重県にて。4月中旬。
▲近づいてみると・・・いました、目玉おやじ!
▲タマゴケに出会うなら低山へ。山道ぞいにひそんでいることが多い。東京都4月上旬。
▲おぉ!巨大群落!
▲しかし、とうてい手の届かない高さ・・・高嶺の花ならぬ高嶺のコケ。
▲4月上旬の東京のタマちゃんはまだ青リンゴ状態でした。
▲こちらは山形県のタマちゃん。毎年GWに訪れる夫の実家の近くの裏山。
▲手のひらよりも大きな群落。崩れやすそうな土の斜面によくくっついていられるなぁ。
▲桜前線と同じくタマちゃん前線も南から北上、東北の見ごろは4月下旬から5月あたりなのかもしれない。
▲ちなみにこれは今年のGWの様子。
今年は全国的に夏の陽気で、同地も10日間連続の晴天。
残念ながらタマちゃんはすっかり乾燥してアイドルらしからぬうらぶれた姿に・・・
最後に。ここ最近の新しいタマゴケトピックとして、
このかわいいタマちゃんを脅かす、
おそるべき菌類がいることも記しておきたい。
それは「タマゴケ寄生菌」と呼ばれ、タマゴケの雌株に寄生して、
本来、胞子体が出るべきところを菌糸で覆ってしまうというのである。
もしタマゴケの群落から真っ白い柄が何本も伸びていたらご注意を。
それはタマゴケ寄生菌の可能性が高い。
(写真で紹介したかったのですが、ざっと探したところ手持ちの中からは見つからず…)
なおこの菌についての詳しい話は、Google等で「タマゴケ 菌」で検索してもらうと、
日本植物分類学会が公開している「ニュースレター No. 47」の16ページ目に
コケを研究している学生Oさんが寄稿された文章が読める。
また、自然科学系雑誌「このは」(文一総合出版)でも「コケに寄生する菌類」のタイトルで
コケ研究者のAさんがタマゴケ寄生菌について触れられている。
ご興味がある方はぜひ読まれたらよいと思う。