▲雪をかぶったタマゴケ。
赤目四十八滝は三重県名張市に位置する渓谷で、
そのむかし伊賀忍者の修行地でもあったという隠れ里。
そのせいかいまでも交通がなかなか不便だ。
車で行くならまた違うのかもしれないが、
残念ながら当方免許ナシ。電車とバスだけが頼り。
今回は実家のある神戸に泊まってから向かったので、まずは大阪・JR鶴橋駅へ。
そこから近鉄線に乗り換える(関東からの場合は名古屋から行けます)。
「急行」に乗って約1時間、ただし急行は1時間に
1、2本しかないので、よく時間を見て行かねばならない。
ちなみに鈍行だと1時間半かかるのでできれば避けたい。
赤目口駅で下車し、ここからはバスに乗るのだが、
これまたバスの本数が少ない。
朝10時を始発に1時間に1本あったりなかったり(冬ダイヤと夏ダイヤあり)。
しかし、この交通の便の悪さをおしてでも、
現地に行けばそんなことを一気に忘れさせてくれるほど
表情豊かなコケたちがそこにはわんさかと生きづいている。
そのことを私はいままでの2度の訪問でじゅうぶんに知っている。
ところが、バスを降りて道なりにゆるやかな坂を登っていくと、
目に飛び込んできたのはなんと、一面の雪景色・・・(ガーン)。
あらかじめホームページで気温などをチェックしていたので
ある程度の防寒対策はしてきたが、こんなに雪深が積もっているとは予想外。
「アイゼンは履いてますか?」
と渓谷入口の受付で言われたので、いいえと答える。すると、
「今日は道が凍結しているので、そこに置いてある縄を靴に巻きつけてから歩いてくださいね」
とのこと。
▲受付のそばに置かれた縄。無料で借りられる。
▲イラストを見よう見まねで縄を靴に縛り付けてみる。
なるほど、少々歩きにくそうだけど
これですべるのが防げるというわけか。
いつもはテンションが上がるあまり
駆けるように渓谷に入っていくのだが、
今日は凍った地面ですべらないようにそぉっと、そぉっと。
抜き足差し足忍び足状態で、遊歩道を進んでいく。
するとそこには、過去2度の訪問で見た
緑あふれる夏の景色とはうってかわって
わずかな日光が差し込むだけの幻想的な渓谷の姿があった。
▲川が一部分凍っているため水量がいつもより少ない滝。
▲「四十八滝」という名のとおり、たくさんの滝が渓谷にはあるのだが、こちらの滝はすでに凍っている。
▲川のほとりが凍っている。
▲水の流れが氷を削る、自然の造形美。
▲この日は雪景色や氷瀑を撮りに来たカメラマン何人かと出会った。
▲ときおりザザッと音を立てて、高木の枝に積もった雪が重みで落ちてくる。
※ちなみに夏の赤目四十八滝はというと・・・去年6月に訪問した時の様子。
http://blog.goo.ne.jp/bird0707/e/24b3bdf212eb74063b8538479c23d34e
ほぅ。山の生命力を雪の中にすべて閉じ込めてしまったような
ひっそりとした雪景色もまたおつなもの。
寒さも忘れてしばらくぼーっと景色を眺める。
しかし、ふと気づいた。
「こんなに積もっていて肝心のコケは見れるのかい!?」
案の定、平地に生えるコケたちを見るとその多くは雪に埋もれ、
斜面に生えるコケたちは土からしみ出た水や滝の飛沫が
凍ってできたツララに閉じ込められてカチンコチン状態になっている・・・。
ごらんのとおりのありさまだ。
しかし、全長約4?の遊歩道を進んでいくと、
ところどころは陽の光がいい具合に当たってすでに雪が解け始め、
青々としたコケが雪から顔をのぞかせている。
なかには胞子体をつけた種類もちらほら。
おー、いたいた!
雪でおしりがぬれないよう気をつけながらしゃがみこみ、
それからはいつものとおり、しばしじっと動かずルーペとカメラでコケ観察。
▲一見、雪をかぶったコケシノブ(シダ類)の仲間ですが・・・
▲アップで見るとほらこのとおり、カビゴケが「今日も元気に生きてます」。
▲左上から時計回りに、ホウオウゴケの仲間、ムチゴケ、ハイゴケの仲間(かな?)、ヒノキゴケ、ネズミノオゴケ、ムクムクゴケ。
聞こえてくるのは遠くで流れる滝の水音と
自分の指がカメラのシャッターを切る音だけ。
コケとの静かな時間がゆっくりと過ぎていく。
●おまけ
▲上のムクムクゴケをアップで激写。寒さに負けずムクムクの毛(細かく裂けた葉)は健在。