▲?(サク)をつけたフルノコゴケ。(2012.6月初旬 神奈川県・箱根にて)
あっというまに7月も下旬に入ってしまった。
突然ですが、暑中お見舞い申し上げます。
近畿や関東甲信越などでは梅雨明け早々、
夏本番の暑さとなっていますが、
みなさまおかわりありませんでしょうか。
またもブログがなかなか更新できていないわけだが、
そういう時はたいがいコケ見に忙しく、
あちらこちらへと出かけているわけで。
近くは東京都内の御岳山をはじめ、箱根、大阪、三重、山形など、
コケ以外の用事でもルーペとカメラは必携で、暇があったらコケを見て、
私の方はおかげさまで相変わらずのびのびと過ごさせてもらっている。
さて、今日はそんなコケトリップで出会ったコケの中から、
6月初旬に箱根で出会ったお気に入りのコケ、
「フルノコゴケ」を紹介したい。
とにかくこのコケの美しいことといったら!
パッと見は小さくて本当に目立たないのだけれど、
ルーペで群落をのぞくと、そこにはもう、
緑の宝石箱を開けたような光景が広がっている。
どこがどう宝石箱かって?
まずはこちらをご覧ください。
▲6月初旬の箱根。強羅駅前。
▲駅から1分と歩かないような場所の壁面に大きな岩が。
▲あきらかにコケむしているので近づいてみると・・・。
▲群落のアップ。思わず目をひくきらびやかなものがあちこちに!
まるで黒い岩肌に置かれた緑の宝石箱の中に、
いくつもの宝石がちりばめられているように見えないだろうか。
つややかに輝く球形のものは黒真珠、
スクリュー形のものはカットを施されたエメラルド、
花形のものはゴールドのブローチ!
さて、総額にしたら、いくらになるかしら?!
普通、こんなものが道端に落ちていたら、
即刻、警察に届けなければならないほどの大騒ぎなのだろうけど、
こんなにきらびやかでも、コケはコケ。
実は黒真珠と花形のブローチは、
フルノコゴケの?(サク。胞子がつまっている部分)なのである。
そしてエメラルドは、この?を保護するためのものだ
(おそらく『花被』<かひ>と呼ばれるものかと思います)。
胞子が熟した期を見てエメラルドから黒真珠が顔をだし、
そしてこの黒真珠が弾けると、4つに割れて花形のブローチとなるしくみ。
もちろん、?が割れたと同時に、胞子も辺りに飛び散る。
実はこのコケ、以前にも実家のある
神戸の山ふもとの住宅街でも出会ったことがある。
ブロック塀に群落を広げ、やはり?をつけていた。
たしか梅雨から夏にかけてのことだったと思う。
図鑑によると、フルノコゴケは雌雄同株とのことなので、
わりと?をつけやすいのかもしれない。
この先何度出会っても、またこのきらびやかさを
見てしまったら、今日と同じくらい感動してしまうだろうな。
▲黒真珠にエメラルドにゴールド! まるでコケの宝石箱や〜!!
▲ちなみにスケールとしてはこんな感じ。群落の中から個体を取り出して、ペンと並べたところ。
ごらんのとおりの小ささだが、図鑑によると
山地よりも低地の人家の周りに多いコケなのだとか。
岩や塀以外にも、樹幹などでも見られるようだ。
あなたの家の周りにも、もしかしたら
この緑の宝石箱がひそんでいるかもしれませんヨ。